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・・・え、だれ?
声もなく見つめると、その人は笑顔で自己紹介をした。
「お電話しておりました山田と申します。」
「ああ、お電話の!」
不動産屋のおじさんが大きく頷いて頭を下げた。
え?
え、え?
「ちょうど通りがかったら、電気が点いておりましたので、物件を覗かせて頂こうかと思って。・・・お取り込み中でしょうか?」
「いえ、ちょうど備品の確認をしていたところでしたので、説明が省けます。・・・忍ちゃん、置いておくものを教えてくれないか?」
ええー?!
ちょ、ちょっと待って。
次の借り手にぼくが説明するの?!
口をパクパクさせながら歩さんを見たけど、歩さんはどっかりとソファ席に座って居眠りをしていた。
ええーーーーーー!!!
「・・・忍ちゃん?」
促されて、思わず額を擦った。
ちょっと待って、ちょっと待って!
まだ、ぼく覚悟が・・・!
ごくりと唾を飲み込んだ。
山田さんは、穏やかな目でぼくを見つめている。
手放したことを後悔したばかりなのに、目の前で取られるかもしれないと思うと、余計に心臓がバクついた。
「え、えっと・・・。」
でも、ぼくは厄病神を連れている。
長い目で見たら、手放した方がお店のためにも良いのかもしれない。
そう思い直して、コーヒーミルから手を離した。
「き、基本的には、ここにあるものは全て置いて置こうと思っているんですけど・・・。」
あ、でも、おじいちゃんのサイフォン。
「このサイフォンだけは引き取っても良いですか?」
断られるかもしれない恐怖は、こんなにも深いのか・・・。
すぐ諦めてきた人生だったから、欲しいと思うものを奪われるかもしれない恐怖は、尋常ではなかった。
「ええ、もちろん。・・・その後ろの冷蔵庫も良いのかしら?」
「あ、はい。業務用ですから、家庭では使いませんし。」
心底ホッとした。
「そのカウンターの下の製氷機も?」
「あ、はい。」
ズカズカとカウンターに入ってきた山田さんは、そっと冷蔵庫の扉を開けた。
「・・・あら、これ何かしら。」
「え?」
そこには、信じられないものが入っていた。
「え?!」
と、店の入り口がものすごい勢いで開いた。
ええーーーーーーーーーッ!?
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