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散々投げて、めちゃくちゃ笑って。
赤鬼も反撃しだして、しまいには笑いすぎで呼吸困難になったところで一旦休戦となった。
「はぁっはぁっ・・・!」
良い歳した大人が汗だくで投げ合った豆は、あたり一面散らばっている。
だけどパックだから汚くもなくて、後片付けまで考えて用意されたこの状況が可笑しくて堪らなかった。
「どうだ・・・っ、忍!」
歩さんのおかめのお面は、もはやどこかに行ってしまった。
「き、キツイ・・・ッ!」
笑いすぎて、主に腹筋が辛い。
「なにー?!もうへばったのか!!」
「ち、ちがっ、笑いすぎて。」
みんな呼吸が荒い。
赤鬼青鬼ピンク鬼さんたちも、みんな床に座り込んでいる。
「加藤さん、大丈夫?」
山田さんが笑いながら赤鬼に声を掛けている。
「だ、大丈夫・・・、今は。」
そう言うと、歩さんが同意した。
「明日が怖いな。」
「そうそう、普段使わない筋肉使った・・・。」
ぱたりと背中から床に倒れ込んだ加藤さんを、青鬼が画用紙で扇いだ。
「激しい節分でしたね。背中揉みましょうか?」
「杉さんが天使に見える!」
「あらやだ。ワタシが揉んであげるわよ。」
青鬼は、杉さんというらしい。
山田さんが茶々を入れて、また笑い声が起きた。
「忍、ソコのジャージは加藤。俺の大学んときからの友だち。」
「加藤雅也です、よろしく。」
加藤さんは倒れたまま首だけ上げて挨拶してくれた。
絵面がシュールで、また吹き出しそうになった。
「よ、よろしくお願いします。」
「で、青鬼さんとピンク鬼さんは、」
加藤さんが手を挙げて、歩さんの口を閉じさせた。
「青鬼の杉さんは俺の友だち。ピンク鬼の財津さんを連れてきてくれた天使です。」
「ふふ、そんなこと言って暁さんに叱られますよ。」
加藤さんを嗜めた杉さんは、お面を外して挨拶してくれた。
「杉 小夜(さや)です。・・・子どもたちとやる節分も楽しいですけど、大人の本気節分は更に楽しいことが分かりました。」
ふふ、本当。
節分ってこんなに楽しいものだったなんて知らなかった。
「ぼくもです。節分なんて保育園でやった時以来なので、めちゃくちゃ楽しかったです。」
「ほんと、楽しかったですよね。あ、俺、財津光太郎といいます。」
人懐っこい笑顔を向けたピンク鬼の財津さんは、ぼくとあまり歳が変わらないような気がして親近感が湧いた。
他人に対してこんな気持ちになるのは、初めてで、ぼくは胸をそっと押さえた。
「あの・・・、アイスコーヒー飲みます?」
ぼくの一言に、みんなの目が一斉に輝いた。
「飲む!飲みたいです!!」
暴れたから熱くて仕方がない。
製氷機の電源は切っていたから、二階の冷蔵庫から氷をおろさないといけないけれど、不思議と面倒だとは思わなかった。
むしろ、飲みたいと言われて、凄く嬉しかった。
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