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もう、ひっちゃかめっちゃかになった。
「あは、あははははッ!」
最初こそ、ぼくへ豆は投げられたけど、反撃してたら途中からみんなで投げ合いになって、結局、爆笑しながら戦う羽目になった。
「こら加藤!忍を虐めんな!!」
「なにをぉ?!このドスケベ野郎!」
特に加藤さんと歩さんの戦いは熾烈で、見ててめちゃくちゃ面白かった。
ちなみに早々に戦線離脱したおじさんは、2階に上がる階段に座って、高みの見物と洒落込んでいる。
「えいっ!」
「アハハ!忍ちゃんてば、乙女に手加減無しなの?!」
山田さんは、ぼくのことをちゃん付けで呼びだした。
今会ったばかりなのに不思議と嫌じゃなくて、その距離感が嬉しく思えた。
「山田さんだって、結構強めっ!」
杉さんと財津さんも加わって、めちゃくちゃ楽しかった。
笑い過ぎてお腹が痛いのって、本当に初めてかも。
大人に囲まれた環境だったからか、こんなに肩を張らないで過ごしたことがなかった気がした。
それに学校でも、みんなと話が合わなくて、ずっとひとりだった。
ううん。逆に、ひとりでいるのは簡単だった。
休み時間も勉強したり本を読んでいたらあっという間だし、放課後はお店の手伝いがあったから、すぐ家に帰っていた。
それはそれで寂しいとか辛いとかは、思ったことはない。
当たり前の毎日の生活で、淡々と過ごした。
ただそれだけだ。
だからかもしれない。
今なら分かる。
本当の意味で孤独になりそうな時に考えたのは、自ら選択してひとりになる方法だった。
全てを捨てるという方法で。
「忍さん、楽しいですか?」
杉さんの笑顔の問いに、笑顔で返した。
「めちゃくちゃ楽しいです!」
「また、みんなでやりましょうね。」
投げるのを止めて、周囲を見渡した。
・・・ああ、こういう約束って嬉しいものなんだ。
みんなも手を止めて、ぼくを温かい目で見守ってくれた。
初めて会った人たちばかりなのに、何でこんなに温かいんだろう。
「・・・また、やりたいです。」
そう返事をすると、歩さんがカウンター越しに、ギュッと抱きしめてくれた。
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