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「まずね、深めに焙煎したコーヒーが良くてね。」
カフェオレの作り方を忍から学びながら、俺はあの手紙の内容を思い出していた。
・・・全く、自分勝手すぎんじゃねぇの。
忍が勝手だと泣き出す理由が痛いほど分かる。
あれが最期の手紙っていうのは、救われない。
いや、最期だから真実を伝えなければと思ったのか。
病院での姿を思い出した。
ガンって言ってたけど、正気なうちに、もう少し忍のことを考えてあげて欲しかった。
ため息が出そうになって、唇を引き締めた。
忍は、母子手帳をきちんと読むべきなのかもしれない。
母親の愛情も、父親の愛情も知らない忍は、祖父母に嘘の記憶を植え付けられた。
愛情はあったのだと知るべきなのだ。
だけど、今の忍には、母子手帳を開く余裕は無いかもしれない。
・・・全く、時限爆弾用意しやがって。
部屋に置きっぱなしの手紙は、まだ何か続きが書いてあった。
だけど、その続きは先に俺が読むべきだと思う。
さっきの内容は、まだ子どもの忍には、あまりにも残酷だった。更に残酷な内容がないか、どうしても確認しておきたかったのだ。
「んー・・・、だいたい分かった。」
「だいたいってねぇ!こういうの、難しいんだからね!」
「分かった分かった。で、チョコとかないの?」
「チョコ?!」
プンプンしている忍の声がひっくり返った。
「チョコが欲しいの?!」
「カフェオレには、チョコレートだろ。」
忍の顔が真っ赤になった。
「ありません!」
「なら買ってきて。」
「はあ?!」
足を思いっきり踏まれた。
「なんでぼくが!」
「俺、この辺土地勘ないし。」
信じらんない!!と忍が叫んだ。
「1000円あげるから、好きなもの買ってこいよ。」
「ぼくは子どもじゃない!」
「いいから、散歩してこい。その間に、忍のカフェオレを俺が作ってやる。」
プンプンしながらも、よろよろと出て行った忍の背中を見送ってから、俺はケトルを掴んだ。
カフェオレと手紙。
同時進行で確認する必要があった。
さて、やりましょうかね。
コンロに火をつけると、俺はおばあちゃんの部屋に走って行った。
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