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「どう?」
「うっまい!!」
歩さんの朝ご飯にと出したホットサンドは、なかなか好評だった。
「こんな朝メシ、初めてだ!」
「ふふ、大袈裟。」
昨日の夜、歩さんのたってのお願いで、歩さんのマンションへ移動した。
気分を変える方法のひとつは、環境を変えることだと、半ば強引に連れてこられたのだ。
「忍、冬物をしまって、春夏物を出したいんだけど、何から手をつけたら良いのか分からないから、助けて欲しい。」
と、仕事まで言いつけられた。
良いように使われている感はあるけれど、環境を変えるのはやりたかった事のひとつだ。
今日は一日、洗濯をしながら、色々考えてみようと思った。
「今日はちょっと残業があるかもしれないけど、お利口に待てるか?」
「子どもじゃないんだから、大丈夫に決まってるでしょ。」
ピシッとスーツを着た歩さんは、何だか色っぽくて、真っ直ぐ顔を見れなかった。
「そ?じゃあ帰りはショートケーキ買ってきてやるから、家でじっとしてろよ?」
「もう!子どもじゃないってば!!」
終いに読みかけだったマンガ本も全巻渡されて、ぼくはとうとう笑ってしまった。
「もう子どもでいいや。いってらっしゃい。」
「おう、行ってくる。」
月曜から休み続けて、ようやく金曜日に出勤だ。
きっとたくさん仕事が溜まっているに違いない。
忍は、誰もいなくなった部屋を見渡した。
「・・・さ、はじめますか。」
歩さんの匂いの残るセーターや、厚手のズボン。
それに、冬用の下着をタンスから引っ張りだしていく。
空になった引き出しの中の埃を拭って、クローゼットの奥にしまわれた春夏物の入った衣装ケースを引っ張りだした。
ふふ、似通った色合いだ。
服は好みの色が増える。
歩さんは、黒が多かった。
夏に黒って暑いでしょうに。
でも、ぴかぴかの陽射しの中で、黒いTシャツを着て笑う彼の姿は、容易に想像できた。
「ふふ、虫捕りに行こうとか言われそう。」
それもいいかもしれない。
夏は夏らしいことを童心にかえってやるのも楽しそうだった。
洗濯機に普通に入れて回していいものと悪いものを分けて、洗面所へ運んでいく。
第一回目を回して、忍は部屋を見渡した。
・・・うーん、やっぱり床がザラっとするよね。
掃除機が必要だ。
どこにあるか調べるのも楽しかった。
歩さんには頭が上がらない。
環境がかわることで、たしかに気分が上向きになった。
あのまま家に居たら、とことん落ちていきそうだったからだ。
スティックタイプの掃除機を見つけた。
・・・なんか、高いの多いよね。
意外に高給取りなのかもしれない。
家具も、家電も、高いものが多い。
歩さんて、何してる人だろ?
はじめて疑問に思った。
道端で飲んで寝てた人だから、家もボッロボロでゴッチャゴチャなのかと想像してたけど、全然違うし。
あ、でもおじさんと同じ会社だったな。
・・・なんの仕事してるんだろ。
興味のなかったことに、興味が湧いてきた。
今夜、聞いてみよう。
てか、何か晩御飯作る材料ある??
掃除機をかけてから、何も食材が無ければ買い出しに出よう。
歩さん、どんなご飯が好きかな。
すでに結婚してるみたいな気がしてきて、忍は、胸がモゾモゾした。
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