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真っ先に頭に浮かんだのは、「助けなきゃ!」だ。
小夜にとって、歩と忍、そして不動産屋のご老人は旧知の仲だ。
その歩がモップで襲われているという事実は、小夜をパニックに陥れた。
「かかかかか風見さん!助けてあげて!!」
風見は逆に不動産屋のご老人しか知らない。
どう見てもご老人にボディアタックをしている青年が悪人に見えた。
風見は手に持っていた小夜のお道具類を投げ捨てると、猛然とふたりに突っ込んだ。
その様子を見て、小夜は短い悲鳴をあげた。
助けて欲しいのは、奥でモップ攻撃を受けている新里さんだからだ。
た、助けなきゃ!!
小夜は慌てて背広の男性に飛びかかった。
------------※ ※ ※------------
さて、世の中は春のコロナ禍。
花粉やPM2.5がたっぷりと含んだ風が、ぽかぽかとした陽気の中で、ふわりと吹いている。
普段なら締め切っている色んなお店も、窓や扉を全開放しているのは、世の中の流れだ。忍の喫茶店も、もちろん全開放をしている。
だって今日は、昔ながらのお客様をお迎えする予定だからだ。
つまり昔ながらといえば、それなりのご年齢の方々が集まるわけで、かつ、そのほとんどがパチンコ屋に通っている。
朝10時開店。
玉が出れば何時間でも座って打つ。
だが、1000円札が湯水の如く吸い込まれる台に当たった場合、11時にはヘロヘロになって店を出ることになる。
つまり、午後からおばあちゃんとのお別れ会をするつもりで呼んだとしても、午前中から軽くなった財布を手に時間を持て余す人も出てくるわけだ。
そうすると、ついついいつもの場所に足が向く。
・・・早いけど忍ちゃんを手伝えばいっか。
そんな感じだ。
そうしてご老人たちが、パチンコ屋からゆっくりと集まっていく。
窓や扉を全開放された思い出の喫茶店へ、ゆっくりゆっくりと彼らは集まって行った。
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