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一般的に悲惨で惨たらしく、泣き喚いたり叫んだりしている状況を阿鼻叫喚という。
阿鼻(あび)とは、絶え間ない苦しさを与える地獄に阿鼻地獄があり、そこから来た言葉なのだそうだ。
そういう意味では、この惨状は阿鼻叫喚と位置付けるのは少し筋違いな気もする。
だが、当事者にとっては、阿鼻叫喚だ。
「ダメーーーー!!!」
風見が、不動産屋のご老人から忍を突き飛ばした。
小夜が大久保氏の背中に飛び付いた。
湿ったモップで顔面攻撃を受けていた歩は、小夜が大久保氏に飛びかかった結果、モップが上滑りし鼻を強打した。
「ぃてぇぇ!!!」
「離せぇ!!」
「誰!!」
「ダメーーーッ!!」
・・・阿鼻叫喚だ。
突き飛ばされた忍は、知らない人物にめちゃくちゃ驚いた。
ま、まさか隠し子とか?!
まさかこの人を自分の兄だと紹介するつもりじゃなかろうな?!と、そこまで考えが飛躍した。
「忍!大丈夫か!」
「奥田さん!!」
ひっくり返った忍は、むくりと起き上がると、猛然と風見に突っ込んだ。
「お体大丈夫ですか?」
不動産屋のご老人の肩を押して、店の外に向けた瞬間の攻撃に、さすがの風見も足元がぐらついた。
「・・・っ!」
年寄りに寄りかかるわけにはいかない。
風見は、咄嗟にご老人から手を離した。
「お父さんを離せ!話があるんだ!!」
忍の叫びに反応した大久保は、小夜から背中に登られながらも、満面の笑顔で忍に突進した。
「ありがとう!」
驚いたのは忍だ。
不動産屋のおじさんと話をつけないといけないのに、大久保先生が両手を広げて、意味不明の感謝の言葉を吐きながら襲ってきたからだ。
「うわっ!!」
奇しくもモップ攻撃が終了した歩は、大久保氏の足へと大ジャンプをした。
「うわっ?!」
ぐらりと倒れかけた大久保氏に、バランスを崩した風見が巻き込まれた。
「暁さん!!」
と、店の入り口から叫び声が聞こえた。
「忍ちゃんを救えぇぇええええ!!」
そう、この店の常連客が、忍を襲う悪魔たちを成敗すべく、一気に突入した。
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