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時は少し遡る。
「はぁ〜!!今日はツイてないね!!」
歯の欠けたパチンコ好きのおばさん(おばあちゃん)は、舌打ちをすると店内をぐるりと一周した。
出そうな台を探して、さっきから1000円札を突っ込んでいる。なのに、今日は当たりが出ないのだ。
こんな日は、いつもの喫茶店でモーニングを食べて、ママに愚痴をこぼすのが日課だった。
だけど、愚痴を聞いてくれるママは亡くなってしまい、憩いの場だったお店は閉店した。
若くして上京して、必死に生きてきた。
悪い男にも騙されて、それでも喫茶店のマスターやママがいてくれたから、乗り越えられた。
色んなことがあった。
マスターやママの悪いところも知っているし、忍ちゃんが悲しい目をしていたことも知っている。
何も手を差し伸べることは出来なかった。
下手に口を出して、マスターやママから嫌われるのが怖かった。
・・・つくづく愛想が尽きるよ。
愛人はちゃんと忍ちゃんを幸せにしてくれるだろうか。
いや、もう幸せにしてくれているのか。
自分では怖くて出来なかったことを、彼ならやってのける。
LGTVかなんか知らないけど、忍ちゃんが幸せならそれでいい。
現に、スーパーでは笑顔を見せてくれた。
「おや、あんたもダメかい?」
店の常連のひとり、忠信さんが顰めっ面で裏口へ向かっていた。
「トシエちゃんもか。・・・行くか?」
「行こうか。ちった早いけど、準備を手伝えばいい。」
この人も忍ちゃんのことを気にかけていた。
いや、常連みんなが忍ちゃんのことが好きだった。
「お別れ会たぁ、寂しいけど、嬉しいな。」
店はいつ閉めるか分からないと言われていたが、急にテナント募集になった日は、流石にショックだった。
「しっかりお別れをしないといけないね。」
ママさんと、お店と、そして悲しい顔をした忍ちゃんと。
そして忍ちゃんはマスターとママの呪縛から離れて、愛人と幸せな人生を歩むのだ。
賑やかな店内を出ると、急に静かになる。
この通りは、密やかな空気が漂っていて好きだ。
「おや、扉が開いてる。」
「支度中なんだろ、ジジとババで手伝えることをやろう。」
忠信さんと笑い合って、店へと向かうと声が聞こえてきた。
「ダメーーーー!!!」
「離せ!」
思わず顔を見合わせた。
「忍ちゃんが襲われてる!!」
と、背後から声をかけられた。
「おーいトシエちゃん、声かけてくれてありがとうな。」
呑気な声に振り向いた。
「ノリさん!忍ちゃんが危ない!」
「ええっ?!」
バッグを握りしめると、血相を変えたジジたちと共に、忍ちゃんを助けるべく店へと突入した。
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