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忍は、自分と似た境遇の歩に、驚き、そして親近感を覚えた。
・・・まさか、歩さんが複雑な家庭環境だったなんて!
自分は、ただ自分の不幸に酔っていたことに気がついた。
でも、自分と似た境遇で、それでも笑顔で頑張っている歩のことが、ものすごく近く感じ、そして尊敬した。
お母さんを亡くしてショックだったろうに・・・。
『お母さんが亡くなったと聞いたんです。』
大久保先生のあの言葉に、思わず泣きそうになった。
歩さん、笑顔でぼくに接してくれてたけど、歩さんも辛かったに違いない。
それに、自分の苦しみや寂しさを押し殺して、おばあちゃんのお葬式の段取りやその後のことも、ぼくに寄り添っていてくれた。
胸に沸き起こるのは、愛情だ。
好きだけど好きじゃないと言い続けてきた。
好きだと言ってしまうと、全てが壊れそうな気がしていた。
だけど。
歩さんの胸の中で、息を吸い込んだ。
・・・大好き。
自然と目に涙が溢れて、少しでも動くとこぼれ落ちそうだ。
「息子とわたしが呼ぶのは おこがましいかもしれませんが、どうしても息子にあの時のことを話したいと思いました。」
深い事情があるんだね。
でも、歩さんは頑張っている。
そして、ぼくは彼を支えたいと思った。
「・・・確かに、わたしは新しい家族をつくりました。ですが、息子のことを忘れることなんて出来ませんでした。」
離婚、きっと小さい時にしたんだね。
寂しかったね、歩さん。
「会いたいと思っていました。ずっと大切に思っていました。」
お父さんがこんなに想ってくれてるよ。
ね、そうだよね。
歩さん、歩さんはひとりじゃないから!
ぼくが側にいる。
側にいるから!
忍がぽろりと涙をこぼした。
「・・・その人は大切な人かい?」
結婚の話をするために、歩さんは大久保先生を呼んだ。
なら、なら・・・!
忍は歩の顔を見た。
好き。
もう、嘘はつかない。
お父さんに誓うよ。
振り向いて大久保先生に頷いた。
ぼく、覚悟を決める!
「お、お義父さん、息子さんをぼくにください!」
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