アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
22
-
「あ、の時の・・・!」
むんずと掴まれた尻の感触を思い出した。
にやにや笑うその顔には、めちゃくちゃ覚えがあった。
「残念だね、憩いの場所が無くなるのは。」
「!!」
寂しそうに呟いたこの人であれば!
この人なら忍が何処へ行ったのか知っているはずだ。
「あ、あの!」
「なんだい?」
ポケットに入れたマスクを取り出しながら、どこかへ行こうとするばあちゃんの肩を掴んだ。
「し、忍が何処へ行ったかご存知ないですか?!」
「はあ?」
胡乱な目で見上げられて、チッと舌打ちされた。
「それが人にモノを尋ねる態度かね?」
「え、あ・・・!!」
店での態度と随分違う威圧的な物言いに、俺は面食らいながらも ばあちゃんの肩から手を離して、しっかりと頭を下げた。
「もしご存知なら、忍が何処へ行ったか教えてください。」
深く下げた頭を、ポンと叩かれた。
「・・・お腹空いたねぇ。」
言外の要求に、俺は顔を上げて ばあちゃんに同意した。
「俺もです!食事に行きましょう!」
------------※ ※ ※------------
ばあちゃんは、トコトン容赦無かった。
肉が食いたいと、焼肉屋ののれんを堂々とくぐったのだ。
そして、席に着くや特上ロースから順番に注文した。
・・・ウッ!
いや、多分大丈夫。カードが使えた。
普段からたくさんの現金は持ち歩かない。
だから、クレジットカードやスマホでの決済が出来ないお店じゃないか、普段から店の扉を見て確認するようにしていた。
「ここからここまでは、私の陣地。」
と、網の三分の二以上が ばあちゃんの陣地に決定し、俺は残りの部分で肉を育てながら話出すのを待っていた。
「久しぶりの肉は美味い!」
「良かったです。」
ばあちゃん、教えてくれ!
忍は、何処に?!そして、なにをしているのか。
「どんどん召し上がってください。」
「ありがとね。」
上機嫌で肉を食うばあちゃんに念じた。
話せ。
話せ、話したくなれ!
その願いが通じたのか腹が満たされたからなのか、散々食い散らした頃、ばあちゃんはようやく口を開いた。
「今、何処にいるのかは知らないけど、あの子は不憫な子だよ。」
不憫・・・。
「おばあちゃんが入院されていることですか?」
ジッとばあちゃんは俺を見つめた。
「あんた、愛人のくせに忍ちゃんに逃げられたのかい?」
唇を噛み締めた。
逃げられたというのは、正しいと思う。
「そうです。気付いたら居なくて、慌てて店に行きました。」
「・・・そうかい。」
ばあちゃんはウーロン茶を一口飲んだ。
「あの子はね、産まれた時からひとりだったのさ。」
「え・・・。」
ばあちゃんから出てきた重い言葉に、俺は言葉を失った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 201