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不眠は、誰にでも起こりうる病のひとつで、不規則な生活や薬の影響、心理的なストレス等から発生する。
忍はベッドの中で、両手で顔を覆った。
夜の暗闇に染まった部屋の中で、全てを遮断するかのように視界を塞いだが、頭は冴えていて寝れそうもない。
自分がその不眠になっている自覚はあるし、その原因も知っていた。
・・・たぶん、愛してもらいたいんだ。
歩さんとの時間は、凄く心地良かった。
大人の男性って、こんなにも包容力があるのかって思った。
見たことのない父親は、どんな人だったんだろう。
お母さんに聞きたくても、星になった彼女は教えてくれない。
・・・みんな、星になっていく。
取り留めもない考えが浮かんでは消えていく。
時計の音が響く室内は、暗く沈鬱だった。
ベッドに丸くなって、長く、そして息の続くかぎり肺の中の空気を吐き出した。
・・・だめだ、寝れない。
体は疲れ切っている。
ずっと満足に寝ていないし、栄養失調気味なのも自覚がある。
食べる気がしないのだ。
それに、食べなくても体は動いた。
と、携帯が震えた。
夜中に鳴る電話は寒気がするほど不吉で、呼吸がヒュッと止まった。
両手を顔から離し、光る携帯を凝視した。
そして目を見開いたまま、震える手で携帯を掴んだ。
・・・あ、あ!
きた。
とうとうやってきた。
青白く光る画面には、病院の電話番号が表示されていて、忍の心をギュッと押し潰した。
いやだ。
ひとりになってしまう!
「・・・っ!」
出なきゃ。
電話に出なきゃ。
心臓が激しく鼓動を打ち鳴らし、冷たい汗が背中を伝っていく。
ぃ、やだ。
おばあちゃん、おばあちゃん!!
覚悟してたのに、覚悟出来ていない。
分かっていたのに、分かりたくない。
おばあちゃんが、おばあちゃんが、死んじゃう!!
プツッと呼び出しが切れた。
同時に、詰めていた息がすうっと抜けた。
「はあっはあっ、はあっ、はあっ。」
忍は息を整えながら、ゆらりとベッドから立ち上がった。
電気を点けて、財布をポケットに突っ込んだ。
・・・行かなきゃ。
おばあちゃんのところ、行かなきゃ・・・!
携帯がまた震えた。
今度は絶対に取らないといけなかった。
おばあちゃんを絶対に、ひとりで逝かせるわけにはいかない!
「はい、奥田です。」
声が震えた。
「はい、・・・はい、すぐに行きます。」
時間が止まってくれたらいいのに。
忍は唇を噛み締めると、鍵を掴んで飛び出した。
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