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人間、長く生きると色んな事がある。
大切な人を看取ることも、掴めなかった幸せに絶望することも、そして、体が震えるほど愛おしく幸せな気持ちになることもあった。
恋は、遥か遠い昔にした。
恋をしたあの眩しい日々は、大切な思い出だ。
妻と出逢い、心の底から幸せを感じ、彼女が産んだ子どもを抱き上げた時には、それこそ幸せに咽び泣いた。
これこそが愛だと思ったのだ。
懐かしい大切な宝物の日々は、わたしの中に刻まれている。
幸せな人生を送ったと思う。
後悔は、全く無いといえば嘘になるけれど、概ね、苦かった過去は噛み砕いて消化している。
次に自分へとお迎えが来た時には、ジタバタせずに受け入れる心づもりもしてある。
だけど、だけど・・・っ!
「忍ちゃんを離せぇぇぇえええ!!」
見たことあるジイさんたちが、襲ってきたのだ。
こ、こんな事で死ぬわけにはいかない!!
さすがの自分も、喫茶店で暴漢に絡まれて死亡なんてことは受け入れられない。
妻と子ども、出来れば孫に囲まれた状態で静かに旅立つつもりなのだ。
風見さんがさっきから守ってくれていたが、何回か拳が腕に当たっている。
我慢ならなかった。
不動産業は、荒っぽいことも体験する。
家賃を滞納し、よもや夜逃げしようという悪質な借主への取立てだってやってきた。
自分も、守られるだけの年寄りではないのだ。
青鬼の子が、バアさんからカバンでメッタ打ちにされているのを見て、さすがのわたしも腹が立った。
両足をしっかり踏ん張り、息を大きく吸い込んだ。
そして、下っ腹に力を入れて暴漢どもを睨みつけた。
「・・・いっかい、鎮まれぇええええええええ!!!」
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