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「忍ちゃんは、えるじー何とかなのか?」
「そうそう、それそれ。」
「それって〜と、昔のアレか?」
・・・ちっこいおじいちゃんたちと向き合った。
「忍さんを守ろうと、先程は襲いかかってきたと判断してよろしいでしょうか。」
「襲うってぇと、こちとら悪者みたいじゃねぇか?」
朝から焼酎の匂いがするのは何故だろう。
「失礼しました。助けようとご尽力なさったと言い換えます。」
気のいいご老人たちだ。
多少ガラが悪いのは、ご愛嬌だ。
「おお!それだそれ。変なのに襲われてただろ!」
変なのイコール俺と大久保さんだ。
片眉を上げて大久保さんを見ると、困ったように肩を竦めている。
確かに俺たちは不審者だ。
この中の殆どの人と面識がない。
それに多少手荒なことをしたのは事実で、変なのと言われても仕方がなかった。
「お怪我はありませんか?」
「大丈夫!痛みは一週間後にしか分からないしな、な?トシエちゃん。」
「あんた良い男だねぇ。キスしてくれたら一発で治るよ!」
はい、解決。
笑って流して終了だ。
まだ「嘘だろ?!」「ぼくが言いたい!なんでそうなったの?!」と痴話喧嘩をしているふたりを振り返った。
肝心の大久保さんは蚊帳の外で、まずは揉めているふたりを止めて、大久保さんとひとつのテーブルに着かせてようやく片付く。
それまでは、気が抜けないのだ。
「皆さん、一旦外に出て頂けませんか。親子の対面をさせてあげましょう?」
「ああ、そうですね。われわれも外に出ましょう。」
不動産屋のご老人は、キレるとめちゃくちゃガラが悪くなるのは先程学んでいる。
彼の同意と協力的な一言に、ちっこいおじいちゃんたちは反論せずに店の外に出て行った。
「小夜、そこにいらっしゃるのが忍さんのおばあちゃん?」
カウンターに祀られているおばあちゃん。
ハツラツとした笑顔を振りまく彼女は、とても幸せそうだった。
「そうだよ。綺麗な人だよね。」
俺たちの会話を聞いて、ようやく痴話喧嘩が静かになった。
「あの、・・・杉さん。」
忍さんが遠慮がちに声を掛けてきた。
「忍さん、お邪魔しています。」
乱闘に参加していた経緯を一切無視して笑顔で対応した小夜は、すごいと思う。
「今日はおれの魔法使いを連れてきました。」
小夜が俺の腕を取った。
軽く引っ張られて、なんだか面映ゆかった。
「忍さんも魔法使いを捕まえましたね。」
「ふふ、みたいです。」
魔法使いにされた新里さんと俺は、微妙な顔をして頭を下げた。
こんな紹介のされかたは、生まれて初めてなのだ。
「・・・あの、今日はおばあちゃんとのお別れ会をしようとしてて、杉さんも魔法使いさんも良かったら参加していただけないですか。」
顔を見合わせた。
「ご迷惑ではありませんか?」
さすがに口を挟むと、忍さんは少しモジモジした。
「いや、その・・・杉さんと話したくて。」
俺は新里さんと目を瞬かせた。
「・・・なら、忍さんは大久保さんと先にお話ししなきゃです。そのあとにお話ししましょう?」
思わず小夜を見下ろした。
「暁さん、いいかな?」
買い物以外は予定はない。
ないから構いはしないけれど・・・。
「いいけど・・・。」
身内だけのお別れ会に参加するのは気が引ける。
「良かった。忍さん、きちんと話し合ってください。キッチン借りますね。」
え。
小夜の考えがよく分からずに、風見は目を丸くした。
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