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「お母さんは・・・。」
お母さんは、お父さんのもとを離れた。
好きだから離れたんだというけれど、結局、お父さんは苦しんだ。
「ある日、消えてしまった。血眼になって探したけれど、見つけた時には、」
亡くなってしまっていた。
ぼくにお母さんの思い出は無い。
写真でしか見たことのないお母さんは、すごく遠い存在だと思っていた。
なのに。
「お母さん、最期の日まで書いてくれてる・・・。」
お母さんが亡くなった日。
その日の朝も、お母さんはノートに記録を残してくれていた。
小さな忍を見ていると、頑張らないとと元気をもらえる。
私は世界一幸せな母親だと思う。
忍をしっかり育てていく。
お父さんから無理矢理引き離した私の罪は償えないけれど、ふたりぶんの愛情は注げる。
お母さん、頑張るからね。
あぁ、お母さん!
お母さん、お母さん!
ぼくは、お母さんの記憶がない。
ないけど、いま、お母さんが愛してくれたのは感じることができた。
「お父さんっ・・・!」
ひとりだと思っていた。
おばあちゃんが亡くなって、もうぼくには誰もいないと思っていた。
「忍!」
お母さん、ごめんね。
おばあちゃんのところで、すみれを演じていた時、本当はお母さんのこと嫌いだった。
お父さん、ごめんね。
おばあちゃんから「父親に似た」と言われるたびに、吐き気がするほど、お父さんのことが嫌いだった。
ごめん、ごめん。
本当にごめんなさい。
ぼくは、ひとりじゃない!
お父さんと抱き合って、わんわん泣いた。
いままで我慢していた色んなことが浮かんでは、全て涙で流れていった。
「忍、頑張ったな。よく頑張った!」
欲しかった言葉。
頑張ったことを、認めてもらいたかった。
お父さん、お母さん。
ぼく、頑張ったんだ。
お母さんに会いたい、お母さん!
お父さん、会いに来てくれてありがとう!
「お父さん、お父さん・・・っ!」
「忍!」
鬱屈していた気持ちが、晴れていくのが分かる。
大久保先生がお父さんとは思ってもみなかったけれど、大久保先生がお父さんで良かったと思えた。
と、肩の力を抜いた瞬間。
「忍!!」
「キャーーーーッ!やめてぇ!!」
全ての光景が、ストップモーションで動きだした。
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