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160 after story 46
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そんなわけで指名されてしまった小夜は、自宅で風見とのんびりとコーヒーを飲んでいた。
今日は遅出だ。
いつもよりゆっくりできる。
朝早く起きたのは、来たるこどもの日のための仕込みが溜まっていて、それを片付けるためだった。
連休になる前日、紙しばいをする予定だ。
小夜はまだ経験が足りないため、いろんな先生たちの補佐しかしていない。
だが、主任から直々に小夜の作った紙しばいの時間を取ってくれると言ってもらえた。
これは、まだ学生だったときに課題で作った紙しばいの内容が良かったからだ。
採用試験の際、「自信のある創作物を持ってくるように」と言われ学校の課題を提出した。
そして試験はその紙しばいを実演させられた。
それはそれは、超緊張した。
理事長先生(おじいちゃん先生)と園長先生(えんちょう先生)と事務長(たけちゃん先生)の前で、震えながら実演した。
手遊び歌も、大人ばかりのひんやりとした空気感の中でやりきった。
とにかくシュールだった。
ここに山下がいたら、笑いの発作が出てしまうくらいシュールな光景だった。
他の園を受験した子たちに聞いたら、普通の面接だけだったと言われ、小夜は愕然としたことを覚えている。
「頑張らなくっちゃ!」
「ん、ファイト!」
愛する風見との入籍は、もう少しだけ先だ。
本当は卒業と同時に籍を入れようとも思っていたが、小夜の名字が変わることで、諸手続きがとんでもなく大変になりそうで一旦保留にした。
身内や親しい友人を招いてのささやかな結婚式もしたかったが、コロナもあって、これも保留になった。
ちょうど長崎の祖父も、大腿骨骨折という大怪我をしたこともあり、リハビリをして元気になったところで、改めて区切りをつけることにしたのだ。
『さやこてんてんめん してんてんいちやんりはひてんてんりかてんてんんはてんてんるまる』
と、長崎の祖父はヤル気満々だ。
ちなみにその時のメッセージには、続きがあった。
『うえててんてんんくてんてんとてんてんれすたのしみにしとるはてんてんいまる』
流石の小夜も苦笑いだ。
ちなみにこの暗号めいたメッセージを初めて読まれる方のために解説すると、小夜ごめんじいちゃんリハビリがんばる。ウエディングドレス楽しみにしとるばい。と読む。
そんなわけで、結婚式はコロナが落ち着いて、祖父が元気に歩けるようになってからの話になった。
もちろんその前に入籍は済ませる予定である。
そういう状況のふたりだが、相変わらず仲良しだ。
風見は小夜を愛おしく思い、小夜も風見を愛している。
ふたりは強い信頼と愛情で結ばれていた。
「でもなかなか上手に描けないんだよねぇ。」
「ええ?!それで?!」
風見の絵のセンスは壊滅的だ。
人間を描かせたら首から手が生える。
小夜が描くと、きちんと人間になるし、男の子女の子の区別も分かる。
こんなに上手いのに、小夜は納得していないのだ。
「ふふ、だってこれだと怖がってる感じにならないもん。」
「へぇ。そうかぁ。」
と、食後のコーヒーを飲みつつ、描きかけの紙しばいを広げて、あれやこれやと話をしていた。
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