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165 after story 51
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泣いてしまったのは、恐らく安堵からだ。
さっきから歩さんはプリプリ怒っているし、神様がどうの宗教がどうのと、訳の分からないことを言ってくる。
自分は今後のふたりのために、調べ上げたことを実践しただけで、悪意は無い。
悪意はないけど、歩さんを怒らせてしまったし、はじめての言い合いをして、悲しかった。
それに、非常識な時間に杉さんに電話をした負い目もあって、なんでそんなことをしちゃったのか自分が分からなくて苦しかった。
なんか、うまくいかない・・・。
自分が情けなくて悲しい。
歩さんと一緒に過ごすようになって、なんだか自分が馬鹿になったみたいだ。
ひとりの時には、こんなふうに感情を揺さぶられることもなかったし、もっとちゃんとしてたと思う。
ふたりになって、毎日楽しいし、前向きになれたけど、ダメな自分が浮き彫りになったみたいで、すごく嫌になった。
悲しくて苦しい気持ちを抱えたタイミングで、小夜の柔らかな声を聞いて、思わずポロッと涙がこぼれたのだ。
『え、泣いてるの?どうしたの、大丈夫?』
歩は突然泣き出した忍を見てギョッとしている。
だが、忍は歩を見ていなかった。
涙で歪む床を見ながら、大きく揺れた感情を持て余して、はふはふと息を継ぐ。
「お、取り込み、中に、電話してごめんなさい。」
『え、あ、・・・んん?』
小夜の頭の中は、大きなハテナマークが浮かんだ。
お取り込み中の意味が計りかねたのだ。
風見が電話を代わるようジェスチャーしたが、小夜は首を振った。
マイク部分を押さえて、「忍さんが泣いている」と伝えると、風見は顔を顰めて額を押さえた。
一方、歩は、突然泣き出した忍の前で、オロオロとティッシュの箱を差し出している。
『どうしたの?何かあったの?』
「・・・杉さん、ぼく、今日、病院行こうと思ってて。」
『病院?!』
小夜はスマホを取り落としそうになった。
歩は一向に受け取ってくれないティッシュの箱から数枚抜き取り、へっぴり腰で忍の目元を押さえた。
風見は小夜の驚き様に嫌な予感を募らせて、「で・ん・わ・代われ!」と手を伸ばし、泣いている子を放っておけないと、小夜は風見に背を向けた。
「歩さんが、行こうって・・・っ」
『え。新里さんが?!』
小夜はパニックだ。
てっきり、忍が去勢に行くと新里さんに話して、新里さんが行かないと言って揉めていると思っていたからだ。
一方で忍は、順を追って説明していくつもりだった。
「うん、一緒にって。だから準備してたのに。」
『し、新里さんに何を話したの?』
「去勢の話です。」
鼻を啜る音を聞きながら、小夜は足がよろけた。
まさか、新里さんが去勢にノリノリになるなんて!
『きょ、去勢は猫の話だからね!忍さんはしなくて良いんだからね!』
「え、ふたりしなくていいんですか?」
『し、しない!猫の話なんだから!』
小夜の必死な言葉に、忍は「なるほど」と唸った。
ネコだけしたらいいのだから、歩さんだけ去勢したら良いのだと納得したのだ。
「片方だけでいいんですね。」
『片方?!』
小夜は思わずギュゥッと玉を押さえた。
片方でも取るなんて、恐ろしくて堪らない。
『両方とも取っちゃダメだよ!』
忍は首を傾げた。
あ、交代制だからか。
「交代制の場合は取らないんですか?」
『交代制?!』
風見が代われ代われと小夜の肩を連打している。
小夜は首を振りながら、交代制について必死に思い出そうとした。
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