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168 after story 54
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「ごめんなさい、ぼく、どんな風にお詫びしたらいいか!」
忍は、受け取ったスマホに向かって深々と頭を下げた。
『大丈夫、勘違いは誰にもあることだから・・・ね?元気だして。』
優しい杉さんの言葉に、ポロポロと涙が溢れた。
『ほら、泣かないの。それに・・・謝るんだったら、新里さんに謝らないと。』
う、うぅっ。
『大丈夫、ちゃんと誤解が解けたんだから、勇気を出して謝って。』
「はい・・・。」
勘違いで、歩さんの下のモジャを結んでしまったことや、こんなに大きな騒ぎになってしまったこと、悲しくて涙が止まらない。
『おれも最初は何も分からないことだらけだったけど、愛があれば何でも乗り越えられるものだよ。』
嗚咽が止まらない。
『大丈夫、大丈夫。深呼吸しよう?』
言われるがまま思いっきり息を吸い込んで、ブヒッと鼻が鳴った。
電話越しの杉さんは無言でスルーしてくれたけど、呆れた顔をして仁王立ちしていた歩さんは、目を丸くした後、ブハッと吹き出した。
「忍、お前ほんとにマヌケで可愛いなぁ。」
マヌケは余計だけど笑ってくれて、じんわり胸が温かくなった。
「杉さん、ぼく大丈夫、です。きちんと謝ります。」
『うん。じゃあ、また何かあったら教えてね?』
「はい・・・えっと、」
言いたい一言を言うのって、勇気がいった。
「えっと、えっと・・・。」
『なぁに?』
深呼吸して、また鼻が鳴った。
なんか全然格好がつかなくて情けない。
情けないけど、この一言を伝えたかった。
「えっと・・・お兄ちゃん、ありがとう。」
『・・・。』
杉さんは一拍おいて、笑ってくれた。
『ふふ、ありがとう。忍くん。』
お兄ちゃんって、人生で初めて使ったかもしれない。
お兄ちゃんって呼びたい人と初めて出会ったかもしれない。
だから、呼んでみた。
そしたら、笑って応えてくれた。
受け入れてもらえた喜びで、胸が温かい。
迷惑ばっかりかけてしまったけれど、改めてお兄ちゃんたちにお詫びをすることを決意して、通話の切れたスマホを床に置いて改めて頭を下げると、ぼくはきちんと歩さんに謝るべく、歩さんの足元へ膝を折ったまま体を向けた。
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