アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
176 after story 62
-
ぼくは、何が起きたのか分からなかった。
胸が苦しくて、息が出来なくて。
なのに、涙が出てしまうほど、安心感に包まれた。
大好きな、歩さんの胸の中。
大好きな歩さんの心臓の音。そして、くぐもった声。
でも同時に、ここにいちゃいけないような気持ちになって、ぼくははふはふと喘いだ。
好きなのに、嫌われることが分かっている。
好きなのに、好きなのに・・・!
認めなければ良かった。
好きって気持ちに蓋をして、何事もなかったように店を閉めて、消えてしまえば良かった・・・!
そうすれば、こんなに苦しい想いをしなくてもよかったはずなのに。
涙で濡れた世界は、歩さんの腕しか見えなくて。
その狭い世界が堪らなく大好きで、でも苦しくて。
「ぅ、・・・っ」
震えてしまう肩は、何故なのか。
止まらない涙は、どうしてなのか。
爪を立ててでも逃げ出したい胸の中なのに、ずっと居続けたいと思ってしまって、相反する気持ちに胸が焼け焦げてしまいそうで。
「忍、忍!」
困らせなくないのに、困らせてしまう自分が嫌で仕方がなかった。
なのに、もう少し甘えていたくて。
「忍、落ち着いて。少し座ろう?」
ベッドに座らせられて、歩さんと体が離れるのを感じて、すごく嫌だと思った。
中途半端な姿勢で、歩さんが辛いのは分かっていたけれど、今離れてしまいたくなかった。
背中に回した腕に力を入れて、額を彼の胸に擦り付けた。
「・・・じゃあ、一緒に寝転ぼうか。」
まるで、赤ちゃんみたいだ。
しがみついたまま、離れられない。
こんなにも離れなきゃと思っているのに、体は正直だった。
もう一度、息が止まりそうなくらいの力で抱き寄せられて、体の自由が奪われた。
そのままお尻が宙を浮き、歩さんに抱えられたまま、ベッドに横になった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
176 / 201