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179 after story 65
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心の中で一番大きく占めている感情は、恐怖だ。
その恐怖は、好きだからこそ起きる感情だと今なら分かる。
「・・・あの日、病院に行った日。」
「うん。」
温かな腕に包まれて、ぼくはあの夜のことを話しだした。
「美味しい中華食べて、歩さんのマンションに行った日、覚えてる?」
「もちろん。マンガの話したりしたよな。」
「うん・・・。」
そして、おばあちゃんのこと、これからの事を忘れるために、ぼくから誘った。
「あの時、・・・ぼくから抱いて欲しいって言ったのも覚えてる?」
「ああ。・・・自暴自棄になってるのも分かってた。」
・・・そうだよね、あの時はめちゃくちゃだった。
心が凍えて、死にそうだったんだ。
「・・・本当は、あの時が初めてで、なんにも知らないくせに知ってるふりして・・・抱いてもらったんだ。」
人肌が、恋しかった。
唯一の身内であるおばあちゃんが死んでしまう恐怖に、おかしくなりそうだった。
「馬鹿なことをしたと思う。歩さんを騙してた。」
「騙してたって・・・。いや、あの時、抱いたことに後悔は無いよ。」
大人って、嘘つきだ。
あの時、後悔してたもん。
「・・・最低って、言ってた。」
「え?」
そう、うなだれて言っていた。
「あの時、あのセックスのあとに最低って言ってた。」
「ええ?!」
顔をみると、歩さんは心底びっくりした顔をしていた。
「ちょ、ちょっと待って。」
「多分、ぼくの下手さとか、男同士っていう汚さとか、そういうのに対して言ったんだと思う。」
「いやいやいやいや!!!そんなことないし、汚いとかも思ってないし、むしろ忍が感じまくって興奮しまくった感じだし!!」
大慌てで首を振る忍さんに、強がって微笑んでみせた。
「無理しなくて良いよ。ぼく、覚悟してるから。」
「いやいやいやいやいやいや!何の覚悟よ?!ちょい待ち、ちょっと待った!」
歩さんの唇が高速で動き出した。
「いやいやあの時大人として弱ってる子を抱いて良かったのかのジレンマでグルグルしてて決して嫁の代わりに抱いたとかもなくてとにかく忍から誘われたけどむしろ途中からノリノリで責めちゃってぐったりさせちゃったことに自分で驚きつつも後悔なんてなくてめちゃくちゃ忍が可愛いやら抱きしめたいやらほっとけないみたいな感情に突き動かされてだな自覚症状はなかったけど多分もう好きになっててだけど大人として今抱くのはどうかと悪い大人の典型をやらかしたことに自分を自分で最低だと言った記憶が戻ってきた!!」
ここまで一息に言った歩さんは、ぼくのことを抱きしめた。
「忍のことを言ったんじゃない!俺は俺を責めたんだ!」
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