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試合開始
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熊澤side
試合が始まった。
バスケのことはよく分からんが、今日観戦するにあたって、少しは勉強してきたつもりだ。犬養はセンターというポジションで、ディフェンスの要として奮起するらしい。
それにしても、佐藤か?あんな派手な髪色にして。いくらうちの学校が染髪OKだからといって、少々度が過ぎているような気がするのだが……。
まぁ、そんなことは今は置いておこう。
我が高校、「淀三矢(よどみや)高校」の応援に専念するべきだ。
おっ、淀三矢が点数を入れたぞ!その調子だ!
それにしても、目が忙しいスポーツだ。パスの回しが速く、ある選手がボールを持ったと思ったら、もう既に違う選手の手にボールがある。
犬養は1番背が高い。他の選手を上から見下ろし、ゴールをガードしている。
あいつはいつもニコニコしているから、その真剣な顔が俺にとっては新鮮で、全く別の男を見ているような気分になる。
こうして見ると、犬養も一端の高校生男子だ。
キュッキュとバスケットシューズを鳴らしながら競技をする犬養には、青春の二文字がよく似合う。
しかしそこで、事件は起こった。
淀三矢高校のスリーポイントシュート。弧を描いたそのボールは、リングの縁に当たり、上へと跳ねる。
「リバウンド!」
犬養の見せ場だ。気持ちが昂り、俺は大声で叫ぶ。
犬養はぐんと膝を曲げて大きく跳躍した。相手のチームの選手も、同じように跳んだ。
俺はそれをハラハラして見守る。
そしてもうすぐ、犬養の手がボールに触れようかという時に、相手の選手の肘が、犬養の額に接触した。
はっと息を呑んだ時にはもう既に、犬養はコートの上に倒れていた。
ホイッスルが鳴り、試合が一時中断される。あっという間に救護班が犬養の周りに集まる。
体育館中がざわめいた。
「ねぇ、あれ、血が出てるんじゃない!?」
誰かが言ったその言葉に、内蔵が嫌な揺れ方をした。
……まさか。
身を乗り出して犬養の姿を追う。救護班の背中と背中の間から、一瞬、額から血を流した犬養が見えた。
「い、犬養……」
名前がぽろりと出てしまった。自分でも誰かわからないほど情けない声が出た。
しばらくして犬養は担架に乗せられてコートから退場した。
冷や汗が額を伝う。犬養は…大丈夫だろうか。
試合が再開されても俺の頭は犬養の負傷でいっぱいだった。居てもたってもいられず、俺は席を立った。
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