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犬養side
「で!あのあとどうなったんだよ!」
翌日、教室に着くとすぐに佐藤が寄ってきた。目をぐんと大きく開いて、興味津々の様子だ。
「フった」
「えっ!?フったの!?」
「うん」
「なんでフったんだよぉ!あんな可愛い子そうそう居ないぜ?」
佐藤の言葉に、全くその通りだと首を縦に振る。
「そうなんだよ。めちゃくちゃ可愛かったよ」
「じゃあなんでだ!」
「……分からない」
「は?分からないって…え?」
佐藤が意味がわからないといったふうに眉をひそめた。そしてすぐに、恨みがましい目で俺をジトリと睨んだ。
「コノヤロー!モテるからって調子乗んな!この無駄イケメン!男の敵!」
「お!なになに?何の話してんの」
佐藤が大声を出すから大木が気付いてこちらに来た。
「なぁ、聞いてくれよ大木!犬養のやつ、せっかく告ってきてくれた可愛い子をフったんだとよ」
佐藤が大木の方に顔を向けた。
「顔が好みじゃなかったとか?」
大木が首を傾げて俺を見た。
「いや、そういうことじゃないんだよ」
俺は項垂れた。
ほんと、勘弁して欲しい。俺だって気付いたらあの子をフってて、何が何だか分からないんだから。
「ふーん…さてはお前、他に好きなやついるな?」
大木が悟ったようにニヤリとする。
ドキッ。
胸が鳴る。
まるで、その通りだと言わんばかりに。
「なにそれなにそれ!お前好きな人いたの!?」
佐藤が身を乗り出す。
「いや、いねーし!
てか有り得ないだろ…」
思わず心の声が漏れる。
「有り得ないって?」
大木は耳ざとい。間髪入れずに聞いてくる。
「俺に好きな人がいるとか、有り得ないから」
「なんで有り得ないんだよ」
「だって……」
…熊澤先生だぜ?
そう言いかけてどうにか留まる。好きな人と聞いて熊澤先生を想像するとか本当に末期な気がしてならない。
試合後で疲れていただけだと思ってたんだけど、どうやらそれは違うみたいだ。
寝て起きたら忘れてるだろうと思ったこの気持ちは、昨日よりも強くなっている気がする。
「ま、言いたくないなら聞かないけど、自分の気持ちに蓋すんなよ。気付いてるならなおさら」
大木は急に真面目な顔になって言った。
自分の気持ちに蓋……してるのかな、俺は。
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