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おさそい
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犬養side
「先生!」
そう言って笑いかけると、熊澤先生は怪訝そうな顔をした。ほんと、そういう所だと思うな。
俺が笑いかけて怪訝な顔された事なんて、あなたが初めてですよ。
心の中で呟く。
とにかく俺は、ど〜しても熊澤先生と仲良くなりたいんだ!苦手だと思う人なんて、人生で初めてだから。
「どうした、犬養」
「俺、どこのクラブか知ってます?」
「バスケ部だろう?」
おぉ!俺のクラブを知ってた!ヤバい、なんか嬉しい。
「そそ!正解です。それで、俺ら3年生はもうすぐ引退なんですけど、引退試合が今月末にありまして、よければ見に来てくれないかなー…なんて」
「別に構わんが…」
「やったぁ!ありがとうございます!俺、センターなんで、カッコイイとこ見ててくださいよ」
半ば断られることも覚悟していたから、嬉しさについ声が弾む。
「ああ」
熊澤先生がふっと微かに笑った。
「え……」
予期せぬことに驚いて、思わず声が出た。
い、今、熊澤先生が笑った!?夢じゃないか!?
目をゴシゴシと擦る。更には頬を抓ってみる。
……痛い。
「む、どうかしたか?」
もう一度熊澤先生の顔を見ると、笑顔は消えていて、怪訝そうな顔に戻っていた。
「い、いやいやなんでもないです。じゃあ俺の引退試合、絶対来てくださいよー!」
それだけ言い残して俺はさっさと職員室を後にした。
教室に戻る道すがら、いくらか冷静になった頭でこれまでの事を整理する。
俺は熊澤先生を引退試合に誘った。それでOKが貰えたから嬉しくて…そしたら熊澤先生が、笑った。
「そーなんだよ、笑ったんだよなぁ…」
ゆっくりと1人でその事実を噛み締める。なんいうかこう、見てはいけないものを見てしまったような気がする。
いつも仏頂面のあの人の笑顔。笑顔って言っていいのか分からないほど微かなものだったけれど、それでも俺の目にはしっかりと焼き付けられた。
なんかちょっと、ときめいたというかドキッとしたというか……。
「いや、ないないない。ちょいビックリしただけだよな」
頭を左右に振って余計なことを考えるのはやめた。
教室に戻ると松尾に、顔が赤いぞと言われたのはまたあとの話。
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