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引退試合
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犬養side
今日は6月24日。引退試合当日。
「がんばろーな、ワンワン」
ユニフォームを着た佐藤が、肩を組んでくる。ポジションはパワーフォワード。この日のために髪を真っ黄色にしてきたらしい。
「だからワンワンって呼ぶな、ヒヨコ」
「誰がヒヨコだ!」
「その髪はヒヨコを意識してるんじゃないのか?」
クスクス笑って言うとゲンコツが頭に降ってきた。
「ってぇな!」
「馬鹿者!この髪は神々しさを演出しているのだ!」
「はは、うっせー」
佐藤と他愛もない話をしながら客席を見上げる。
熊澤先生、来てくれてるかな……。
キョロキョロと客席を見渡す。
……あ!居た!
良すぎる体格のせいで他の大勢の観客の中、1人だけ浮いている。相変わらずの仏頂面で腕を組んで堂々と座っている。
「ぶはっ!」
なにこれ面白すぎでしょ。思わず吹き出した。場違い感が半端ない。隣の席の人ちょっと引いてるじゃん。
「せーんせー!!」
ブンブンと手を振ってみる。するとこちらに気付いたようで、片手を小さく上げた。その仕草に頬が緩む。
「熊澤先生じゃん。なんで居んの?」
熊澤先生に気付いた様子の佐藤が言った。
「ひょえー、相変わらず怖ぇな」
「あぁ、俺が呼んだの」
「は?え?まじか!お前、熊澤先生と仲良かったっけ?」
「いいや、良くない。だから呼んだ」
「いや意味わからん」
「まぁ、それは置いといて。絶対勝とうな!」
佐藤に拳を突き出す。
「当たり前よ」
佐藤の拳が、俺の拳にぶつかった。
さて、俺の勇姿、見ててくださいよ。熊澤先生。
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