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三人の王妃3
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とにかく、少年はそうやってひとつのことに集中してしまっていたため、後ろからやってきた足音に気づかなかった。いや、少年は警戒心が強い方なので、もしかすると相手が他の人間であれば気づいたのかもしれない。だが、今回の相手ではそうはいかなかった。なにせ、彼はその人物に対しては無意識に気を許しかけているのだから。
「ああ、こんなところにいたのかキョウヤ。探したぞ」
突然降ってきた低音とともに、少年の肩に大きな手が乗る。
「ひっ!」
まったく予想していなかった接触に、少年は大きく肩を跳ねさせて引き攣った悲鳴を上げた。そして、ばっと後ろを振り返る。
「……あ、貴方……?」
少年の視線の先で驚いたような顔をしていたのは、この王宮の主であった。恐らく、少年の過剰とも言える反応に面食らったのだろう。本当に面食らったのかどうかまでは判らないが。
「驚かせてしまったか、すまない」
「え、あ、い、いえ、……すみません」
何がすみませんなのかは少年にも判らなかったが、取り敢えず謝っておこうと思ったのでそうすることにした。だが、その謝罪に王がやや難色を示す。
「お前に落ち度はないのだから謝らなくて良いのだぞ?」
「え、えっと……、……はい」
謝るなと言われて謝らずにいられるほど少年は自己肯定ができないのだが、ここでそう主張しても無駄だということを彼は知っていた。だからこそ大人しく頷いて返したのだが、王はますます不服そうな顔をして見せる。
さて、いよいよ機嫌を損ねるようなことをしてしまったのだろうかと顔色を悪くした少年の唇に、王の指先が触れた。
「敬語はいらぬと言っただろう?」
「…………え、……あ……」
そういえばそんなようなことを言われた気がするな、と少年は思った。なんだか瞳の美しさに押し切られて承諾してしまったような覚えもある。
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