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三人の王妃5
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「そこの絵が、先代のグランデル王だ」
そう言って王が向けた視線の先にあった絵には、今の王を思わせる顔立ちの男が描かれていた。年齢は、少年を抱いている王よりも上に思える。当代の王の肖像画はおそらく二十歳前後くらいだろうに、どうして父王の肖像画はその年齢のものではないのだろうか。
そう思って内心で首を傾げた少年の頭を、王が撫でる。
「この場所には、即位した年に描かれた絵が飾られるのだ。肖像画の年齢に統一性がないのはそのためだな」
そう言った王は、少年を降ろして当代の王家の肖像画が掛けてある壁へと向かった。そして、自身の絵の下に並ぶ女性の絵を見つめる。その指先が、中央にある絵の額縁に触れた。
「彼女は、私が王になってすぐ、二十歳のときに迎えた妻だ。お前の住んでいる金の国の王家に連なるで女性で、年齢は私よりも二つ下だったな。即位して間もない王の隣に立つという重責を担わせてしまったのだが、己の役割をきちんと理解し実践する、とても聡明な妻だったよ。無論、ギルガルド側が私の王政を安定させる一助足りうる女性を用意してくれたのだと思うが、それにしても期待以上に王妃の役目をこなしてくれる人だった。とにかく短期間で国を安定させる上で、彼女の努力はかけがえのないものだったのだ」
静かにそう言った王が、次いでその左に並ぶ額縁に手を伸ばす。
「私が二番目に迎えた妻が、彼女だ。グランデルでも有数の名家の令嬢で、歳は私よりも五つ下だった。婚姻を結んだのは私が二十二歳のとき。この頃にはもう国政自体は大分安定していたのだが、代わりにロイツェンシュテッド帝国との大陸間戦争が勃発した年でな。私が戦争のために出払うことが多かったので、彼女にも随分と苦労を掛けた。三人の妃の中で、もっとも時間を共有できなかったのが彼女だ。だというのに、私に会えば嬉しそうに色々な話をしてくれる人でな。もっと多くの時間を共にできていたならば、と、今でも後悔が残っている」
小さくを息を吐いた王が、名残惜しそうに額縁を撫でてから手を離した。そして最後にその指先が、右にある額縁に触れる。
「彼女が、私の最後の妻だ。結婚当時の私は二十四歳。彼女は二十六を迎えていた」
そう言った王が、優しく額縁に指を滑らせる。
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