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師匠との出会い3
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特段感慨を持つこともなく少年を観察していた蘇芳は、そこで彼の細い首に赤黒い痕があるのを見咎めた。大人が子供の首に手をかけたら丁度こんな風な痕になるだろうか、と思うような、そんな痕だ。
その痕をしげしげと眺めていると、不意に子供の目蓋が震え、ゆっくりと持ち上がった。そして、うっすらと開かれた瞼の隙間から現れたものに、蘇芳は僅かに目を見開いた。
(……異形の目、か)
黒と金で彩られた、ヒトならざる目。
少年が弱々しく押し上げた瞼の奥、その右目だけが、普通ではなかったのだ。
「……、ぁ……」
少年のひび割れた唇が、何かを紡ごうと震える。それをただ黙って眺めている蘇芳の前で、彼は掠れ切った音を零した。
「…………ぉ、か、ぁさ……」
酷く小さなその呟きは、しかし人外たる蘇芳の耳にはしっかりと届いた。だが、焦点が定まらない少年の視線は、再び下ろされた目蓋に断ち切られてしまった。
それを見届けてから、蘇芳は白い息を吐き出した。
少年の右目は、まさしく異形のものだ。だが、この子供からそういった類の力は感じない。だとするならば、一体どういうことなのだろうか。
僅かな時間、そう思案した蘇芳だったが、すぐに考えるのをやめてしまった。この子供の目のことなど大して興味もないのだし、考えるだけ時間も無駄だと思ったのだ。
いずれにせよ、子供の呟きと異形の目で、おおまかな事情は想像できた。
「まぁ、これも縁って奴だろう」
そう言った蘇芳が、右腕を伸ばして子供を小脇に抱える。右腕にかかった重みは、左肩に下げた酒瓶たちよりよっぽど軽いものだった。
(さて、取り敢えずは宿をとって、この餓鬼を風呂にぶち込まなきゃな)
そんなことを考えつつ、子供の垢や脂やらで汚れてしまった己の衣服を見下ろして、蘇芳は足を速めたのだった。
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