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師匠との出会い6
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枯れ枝のように骨ばった手は盆を握ったまま、食器に手を伸ばす気配はなく、黒い目は相変わらず蘇芳へと向けられている。
そこに浮かんでいる猜疑の色に、蘇芳はもう一度笑った。それから、盆の上から器と木の匙を取って粥を一口食べる。どろどろで半ば糊状になっている米は、優しい味と言えば聞こえが良いが、味気がなさ過ぎる。病人食として頼んだのだから当然ではあるのだが、蘇芳は素直に不味いなと思った。
「お前なんぞに毒を盛って何の意味があるのか気になるところだが、このアタシに毒見役をさせるなんて大層なご身分だな。満足したならさっさと食え、冷めるだろうが」
とはいえがっつくと死ぬからがっつくなよ、と言いながら、蘇芳が食器を盆の上に戻す。それでもなお子供は躊躇っている様子だったが、少ししてから器と匙を手に取った。
恐る恐るといった風に子供が粥を口にし始めたのを確認し、蘇芳も口直しの酒とつまみを口に運ぶ。
暫くして、子供が盆に食器を置いた。器の中にはまだそれなりの量の粥が残っていたが、不味くて食べきれないわけではなく、縮んでいる胃では容量に限界があるのだろう。
盆を卓の上に取り上げ、改めて子供と向き合った蘇芳が口火を切る。
「腹は膨れたな? それじゃあ話をするとしようか。まず現状を確認させてやる。お前が落ちてた。アタシはそれを拾った。汚かったから風呂に入れて、服も酷い有様だから替えて、飢えてるお前に餌をやった。何か質問は?」
「……」
「無いなら次だ。お前が落ちてた時の状況を鑑みると、どうせ帰る場所もなけりゃ行く宛てもないんだろう。というわけで、拾った以上お前の所在と生活の責任は、アタシが最低限持つ。気に入らないなら出てってもいいが、小汚くて非力な餓鬼を拾うような人の良い奴を探してるうちに、お前の限界が来るだろうな。それを理解した上で出て行けよ」
すっぱりとそう言い切った蘇芳に、しかし子供はやはり黙ったままである。愛想のない餓鬼だな、と思いつつ、蘇芳は話を進めた。
「あとは……ああ、名前聞いてないな。アタシは蘇芳。で、お前ともう一人、中にいるあの餓鬼の名前は?」
蘇芳がそう尋ねても、子供は相変わらず黙ったままだ。それを辛抱強く待ってやると、長く続く沈黙に耐え難くなったのだろうか、ようやく小さな口が開いた。
「…………何がしたい」
「あ?」
「何をねらってる」
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