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師匠との出会い7
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子供は取り繕うのをやめたのか、じろりと蘇芳を睨みつけた。その態度に蘇芳は感心する。この状況で、質問に答えるどころかこちらを問い詰めに掛かるときた。蘇芳と子供ではその力量差は圧倒的だと判っているだろうに、それでもなお食いついてくる気があるらしい。
「逆に訊くが、何を狙えって言うんだ? まさかそんなことするような価値がお前にあるとでも言うのか? 馬鹿馬鹿しい」
「何もなくて、きたない子どもをひろって、めんどうをみるって? なんにもたくらんでなくて? それこそ、ばかみたいな話だ」
その言葉に、蘇芳は顔に浮かべていた笑みを消し、すっと目を細める。
「……アタシは寛大だから今のところ許してやるが、目上への口の利き方は気を付けろよ。そこら辺の躾もしないといけないみたいだな」
やや低くなった声に、子供の肩が一瞬揺れた。やはり、どちらが上であるかの理解はできているようだ。
それでも、子供は蘇芳を見据えることをやめはしなかった。色の違う二つの目が真っ直ぐに蘇芳を見つめている。
しばしの睨み合いが続き、その均衡を破ったのは蘇芳の方だった。
「……ふっ、ははっ、ああ、やめだやめ。弱いもの虐めは好きじゃあないんだよ、アタシは」
「なに?」
「いっちょ前に歯向かってくる気概は認めてやるけど、もう少し相手は選んどきな。アタシは今ので怒り狂うほど気が短くないが、世の中そういうのばっかじゃあないんだ。早死にはごめんだろう?」
にんまりと蘇芳が笑って見せれば、子供は不愉快そうな顔をしたものの、反論することはなかった。
「それで、魂胆見せろって話だったか? 魂胆も何もありゃしないが、お前を拾った理由は単に、この地酒が美味かったからだ」
「……は?」
「アタシは酒が好きだからなぁ。今日は良い酒を飲んで気分が良かった。面倒臭そうだったけど、まぁ美味い酒に免じて拾ってやっても良いかと思ったんだよ。この酒を造った杜氏に感謝しときな」
卓上の酒瓶を指差し言うと、子供は呆気にとられたように間の抜けた顔をしたが、次いでその表情が怒りに染まっていく。どうやらからかわれたと認識したようだった。蘇芳としてはごく真面目に事実を言っただけなので、何が気に食わないのやら、甚だ心外である。
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