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師匠との出会い9
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「しかし、そんだけ“きょうや”が精神的に危ないんだったら、これはさっさとお前に言っておいた方が都合が良いか」
言って、蘇芳は自らの右手を差し向けた。向けられた手の甲を見て訝しそうにする子供の前で、その日に焼けた肌がぞろりと鱗に覆われ、五指の爪が長く伸びる。
「見ての通り、アタシは人間じゃあない。普段の見た目だけならヒトとそう大差ないが、まぁ所謂化け物ってぇ奴だな」
つい数瞬前とは違って蛇のようになった目を細めて、蘇芳はひらひらと手を振った。
蘇芳はヒトならざるものの中では割合ヒトに似た感覚を持っているものの、根本的にヒトでない以上どうしても人間とは齟齬が生じるところがある。一緒に暮らしていくことになるからには、前提としてそれを認識していないと不便だろう。どちらにせよ驚くだろうが、後々からヒトではないことを知られて変に怯えられる方が面倒だ。
そう考えてまとめ役の方へと開示したのだが、子供は人外の手に目を丸くしたものの、そう間もなく落ち着いて頷いた。
「わかってる」
す、と小さい指が蘇芳の頭を指差した。その指先の指し示す辺りに本来ならば何があるのか、思い至った蘇芳はぱちりと異形の目を瞬かせる。
「ツノ、見える。それに、アンタの周りに見えるの、ふつうの人といろいろちがう」
「……見えてるのか」
「こっちの目だと、他のには見えてないのが見えたりする。アンタだと、ツノがふたつぼんやりしてるし、首のあたりとか、手のとこもざらざらしたのが見えてる。周りのは、ふつうの人にもいろいろあるけど、アンタのはとくにちがうかんじがする。いろとか、カタチ? とか。みんなだいたいもっとふわふわしてるけど、はっきりしてるし、いろもつよいし」
周りの、というのは、もしかすると魂とか気とかそういう類のものだろうか。まあ根本の存在が違うのだから、自身のそういった諸々が人間のものと違っていてもおかしくはない。
やはりこの子供は、先祖のどこかに視ることに長けた人外が混ざっているのだろう。最初に子供が過剰に怯えた理由は、気づいたら見知らぬ女がそこにいた、というだけではなかったのかもしれない。
便利な目だ、と蘇芳は感心した。だが同時に、これはただの人には過ぎたものなのだろうと察しがつく。群れで生きる動物は、群れの中の異物を好まないものだ。見た目がこれで、さらにヒトが持ち合わせない力を持っているとなれば、歓迎はされるまい。
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