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ひなたぼっこ7
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なんでも彼は、少年の話相手になってやれと赤の王に頼まれて来たらしい。グレイの方も金の国で魔術に関する用事があったらしく、そのついでならと承諾したそうだ。なんとも畏れ多い話である。
そんなグレイに、たまたまぽろっと贈り物の話を零したところ、それじゃあオレが卓上ライターを作ってやるよ、と言ってきたのだ。ライターというと、錬金術によって作られる高級品である。とてもではないが少年に手が出せる品ではないと断ろうとしたのだが、グレイにとっては大した物ではないらしく、結局押し切られてしまった。一応の対価として、長い尻尾を持つ金の毛並みの犬のぬいぐるみの作製を要求されたが、果たしてライターの対価として相応しいかと言われると疑問である。大方、返すものが何もないと少年が気後れするだろうと、グレイが気遣ってくれたのだろう。
そんなこんなでライターを贈ることが決定したのだが、製作を担当してくれるグレイが、折角だからデザインは自分で考えたらどうだ、と提案してくれたのだ。それに迷わず頷いた少年は、どうせなら贈る相手をモチーフにしようと思いついた。という訳で、ティアのスケッチを取る必要があったのである。
こういった経緯のもと朝から進めていたデザイン画も、あとは細かい修正を残すのみだ。今日中にはグレイに渡すことができるだろう。
(……たのしみだなぁ。ティアくん、よろこんでくれるかなぁ……)
綻ぶように笑う。少年にしては珍しく、屈託のない笑顔だった。
少年を見つめていたトカゲはころんと身を起こし、ぷわっと火を噴いた。それから少年の手を降りて、寝転ぶ彼の顔にすりすりと身を寄せる。
普段から温かいトカゲの身体はたっぷり浴びた陽光の影響でさらにあたたかく、少し暑いくらいだったが、退けようという気は起きなかった。
「お日さま、きもちいいねぇ、ティアくん」
ぺちぺちと頬を叩かれたのは、多分肯定の意味だったのだろう。
穏やかで暖かな微睡みの中、一人と一匹が目を閉じる。
二つ分の静かな寝息が聞こえ出すまで、もうあと少し。
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