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異邦者4
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(……とにかく、話ができるヤツをさがさないと)
そう思ったグレイが身体を起こそうとしたとき、その場にいた大人の男が一人近づいてきて、彼の腕を乱暴に掴んだ。
「うわっ」
驚くグレイを気にも留めず、男は彼を荷物のように引き摺った。石の床にすれる膝が痛くて抗議の声を上げたものの、男は目線のひとつもくれない。それに憤慨したグレイは周囲に訴えようと他の大人たちに視線をやったが、もう誰もこちらを見てはいなかった。まるでグレイへの興味が失せたようだ。
グレイを掴んだ大人が向っているのは、どうやら部屋の隅のようだった。隅の方は灯りが極端に少なくて何があるのか見えないが、そこに近づくにつれて悪臭が強くなっていくことだけは感じる。そのあまりの臭いにグレイは思わず片手で鼻を覆ったが、あまり効果はなかった。
そのうち、男はぞんざいにグレイを部屋の一角へと放り投げた。思わず目を閉じたグレイは、固いような柔らかいような、よく判らないものに正面からぶつかってしまう。どうやら、何かが積み上げられている場所に放られたらしい。
ぶつかった拍子に例の臭いが一際強く鼻腔へ襲い掛かってきて、彼は目を閉じたまま盛大に顔を顰めた。触れた塊は水気を帯びているようで、グレイの身体はじんわりと濡れ、不快な気分に拍車が掛かる。
まるでモノのような扱いを受けたグレイは憤慨し、文句を言ってやらねば気が済まないと目を開けた。
――そこで目に飛び込んできたものを、グレイは咄嗟に理解することができなかった。
それは、人だ。間違いなく、人間だ。
恐怖の名残が色濃い顔も、開かれた口から垂れ下がる舌も、見開かれた眼球も。そのどれもが人間にしか見えない。だが、グレイはそう理解しようとするのを無意識のうちに拒絶した。
だって、人間は普通、頭の下に身体がくっついているはずだ。だが、グレイが見たそれは、まるで強い力でねじり切ったかのように、首から下がちぎれていた。
あまりのことに悲鳴を上げることすらできなかったグレイは、そのままゆっくりと視線を動かす。そしてそこに広がった光景に、彼はその場にぺたりと座り込んでしまった。
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