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異邦者16
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「れぅ……り……ぁ……?」
上手に発音できない子供に苦笑したレクシリアを、グレイが睨む。言えていないことくらい、自分でも判っているのだ。
『ああ、悪い悪い。上手く聞き取れないんだな。それとも発音が難しいか?』
グレイがむっとしたことに気づいたのか、レクシリアは素直に頭を下げてきた。どうやら謝ろうという意思があるらしい。それは理解したので、グレイは許してやることにした。
『もう一回いくぞ。レクシリア、だ。レ、ク、シ、リ、ア』
さらにゆっくりとした発音に、グレイは段々馬鹿にされているような気さえしてきた。だが、それもこれも自分が上手に発音できていないせいなので、文句は言わないでおく。
『レ、ク、シ、リ、ア』
「れ……ぅ、り……?」
『れー、くー、しー、りー、あ』
「……りぃ、あ?」
ようやく言葉らしさが出てきた音に、レクシリアが頷きつつ首を傾げるような変な反応を返した。
『あー、なんか若干惜しいような、別にそうでもないような。……もう一回な。レクシリア』
「れぅ……りー、あ」
男がゆっくり言ってくれているのは判る。できるだけはっきり発音してくれているのも判る。だが、どうにもグレイには上手く聞き取って言葉にすることができないようだった。
そのことにグレイの眉間の皺はどんどん深くなっていったが、レクシリアはそんな子供を励ますように明るい声を出した。
『おお、近づいてきたんじゃないか? レ、ク、シ、リ、ア』
「……ぅ…………、りーあ」
『……お前、今ちょっと諦めなかったか?』
少し呆れたような顔をしたレクシリアに、グレイがむっとした顔をする。これでもグレイは精一杯やっているのだ。そんな顔をされる謂れはない。
機嫌を損ねたグレイは、怒りのまま、びしっと男を指差して高らかに叫んだ。
『りーあ!』
これでどうだと言わんばかりの威勢に、レクシリアはゆっくり首を傾げた後、苦笑した。
『…………いや、レクシリア、な?』
『りーあ!!』
どうやら、グレイには譲る気がないらしい。お前の名前がなんだかは知らないが俺がこう言うんだからこうだ、という強い意思をレクシリアは感じた。
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