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スマートフォンが手元にない今、連絡手段もないが、不思議と考えは湧いてくる。
「汐……っ。もう、そんなに泥だらけになって……! どこに行ってたの!? あなたは少し目を離すと、ふらっとすぐにいなくなるんだから……!」
玄関を開けて出てきた紗那は、泥だらけになった汐をまず抱きしめた。
「も……苦しい。一日だけじゃん。……お金持ってないから、出してくれる? タクシーに乗ってきたから」
紗那は家の中から財布を持っていき、運転手に何度も頭を下げていた。
中学の終わりくらいに背を追い越した母親の背中が、小さく見える。
その光景に、ちくりと胸を刺された。
リビングのテーブルには、昨日汐が放り出した鞄があった。
スマートフォンも横に置かれている。
そのことに安堵していると、「お風呂に入ってきなさい」と声がかかる。
紗那の顔をまともに見られなくて、着替えを受け取った後、浴室に滑り込んだ。
母親は家にいて、父親は仕事に出ている。
少し遅い朝の、いつもの日常が変わらずにあった。
シャワーで温まった汐は、スマートフォンを回収するために、リビングへ顔を出した。
「はい……はい。そうなんです。今さっき帰って来まして……。……汐。お父さんから」
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