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──なんで、自分がこんなになってんのに、「よかった」とか言えんの。
いつも感じている怒りとは違う感情が湧き上がる。
上手く言葉に出せなくて、汐は目を伏せる。
「私、下の売店で飲み物を買ってきますね」
「ああ、ありがとう。適当に雑誌も買ってきてくれないかな。看護師さんに毎度頼むのは申し訳なくて」
「分かりました。汐は何か飲む?」
「え? 僕も一緒に行くけど。重くない?」
紗那への気遣いの気持ちも確かにあったが、あまり創一とは二人きりになりたくない。
「大丈夫よ。汐はお父さんの側にいてあげて、ね」
ああ、そういう意図なんだな、と分かった。
母はしばらく帰って来ないだろう。
スライド式のドアが閉まり、入り口に突っ立っているのもおかしな気がして、ベッド横の丸椅子へ座る。
「にしても、昨晩はかなり降ったねぇ」
「……ごめんなさい。酷いこと、言った……」
リクライニングベッドから上体を起こした創一は、汐の頭を撫でた。
「こちらこそ、申し訳なかった。知らないところで、いろいろと気遣わせていたね」
涙の膜は一度瞬きをすると、あっけなく崩れて頬を伝っていった。
傷ついていない訳じゃない。創一は汐より何倍も大人なのだ。
「……紗那さんにプロポーズしたとき。幸せにします、って言ったんだ」
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