アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
* Style3 *
-
汐を見て話すのが気恥ずかしいのか、創一は少し遠くにある白い壁を見つめている。
脈絡のない話に、汐は目をぱちくりとさせた。
「それで……結婚したの?」
「正確には失敗して。私よりも息子を幸せにして欲しい、って言われたんだ」
汐に特別甘い理由はこれだったのか、と納得した。創一は言葉を続ける。
「最初は汐くんに嫌われたくない一心で、接していたんだよ。でも、汐くんは賢いから、そういうの全部、分かっていたんだろうね」
「うん……何となく」
「私も分かっていたよ。汐くんに何となくうざがられたこと」
汐が言い放った言葉を、創一は同じく言い返す。
似合わないと本人は思ったのか、ふっと笑う。
「……僕も、嫌われたくなかったのかも。お母さんが選んだ人だから、ちゃんと好きにならなきゃって思った」
今まで言えなかった本音をぶつける。
互いに歩み寄ろうとしていたのを、焦っていただけだ。
新しいお父さんが出来たのを素直に喜んだら、罰が当たるような気がして、創一を避け続けていた。
お父さんが天国からもし見ていたら、どう言うのか、思うのか。
幼い頃の思い出しかない汐には、全部は分からない。
でも故人の気持ちばかりを尊重したせいで、自分の本当の気持ちが迷子になっていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
71 / 263