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サナギ
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なんだかんだで、衛とは気付けば2ヶ月以上、お昼を一緒にしてる。
相変わらず、持ってくるのは弁当箱ではなく、パンやおにぎり、時々忘れる、だ。
そして、毎回、僕にたかる。
唐揚げと玉子焼きがお気に入りで、野菜(特にブロッコリー)が嫌いだ。
でも、口に入れたものは吐き出さずにちゃんと食べる。
そして、女性のお誘いは断らない。
衛は目立つ。
衛はそれなりに容姿がいいから人目を引く。
最近ではクラスの女子に衛について訊かれることが増え、僕の家族について訊かれることが減った。
それが、平和なようであまり平和に感じない。
そんな日々を過ごしているうちに、夏休みを迎えた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
夏休みは毎年、母と祖母の田舎に行ってたから衛と会うことはない。
お昼ご飯を一緒にするだけの間柄だから、連絡先の交換なんてしてない。
衛と僕の仲なんてそんなもんだ。
夏休みが終わったら、僕のことなんてすっかり忘れて出会う前に戻るかもしれない。
ふと、そんなことに考えたら、ちょっとだけ胸がチクンとした。
夏休み後半。
父と姉の瑠璃は休みを合わせて、1週間だけ家族が揃って一緒に過ごした。
「揚羽、前髪上げなよ」
最近、タレントとしても活動するようになった姉は僕の前髪を手を掛けかき上げる。
一瞬明るくなった視界に目を細めて、その手を退かす。
「別に僕の勝手でしょ」
「揚羽はお母さんに似なんだから、顔隠したら勿体ないじゃない」
「冗談はやめてよ」
もう一度かき上げようと伸ばされた手から逃げるように後ろに下がる。
姉はそれ以上僕を追い掛けることはしなかった。
「でも、勿体ないのは本当よ。今度、私が通ってるサロンで髪切ってもらおうよ」
「やだよ」
僕は、立ち上がって外に出た。
衛といい、姉といい、どうしてそんなに僕の顔を見たいんだろう。
母や姉に比べたら、あまりにパッとしない顔なのに。
『お前、"ちょうちょ"より"サナギ"の方が似合っているよな!アハハッ』
子供の頃に言われた言葉が頭の中に響く。
今ではないのに、未だにその言葉に囚われる。
「はぁ、もうやだ」
僕はその場で暫く蹲った。
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