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マモル
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父は警察官だった。
「衛の字は、マモルを取り巻く人たちを守る人になって欲しいと願ってお父さんが付けたんだよ」
優しく笑いならそう言う父は、幼い俺にとって誇りであり憧れだった。
小さいが平和な町の交番に立つ父は、住民に親しまれていた。
だが、ある日を境にそれは変わった。
覆面をした男が高齢の女性のバッグをひったくる現場に父は遭遇した。
居合わせた通行人に女性を預けて犯人を追い、踏切の手前で追い詰めた。
ちょうど踏切の警笛が鳴り、遮断機のバーが下りて犯人の逃げ道を塞いだ。
父はあと一歩のところまで追い込んだが、犯人を掴み損ねた。
父から逃れた犯人は踏切の中に侵入し、電車に轢かれて死んだ。
覆面の下の犯人は、未成年の少年だった。
その事実に、翌日から父は未成年の少年を追い回し死なせた悪者と住民に罵られるようになった。
俺も学校で虐められるようになった。
でも、父は間違ってないから平気だった。
けど、数ヶ月後。
父は自宅で首を吊った。
毎日のように責められた父は、心が病んでしまったのだ。
葬儀でも、父はは住民の心ない言葉が投げつけられた。
そこには、ひったくり被害にあった高齢女性の姿もあった。
幼いながらも、俺は、父の最後の引き金を引かせたのはその女だと悟った。
「あんたも父さんに酷いこと言ったのか?あんたを助けようとした父さんにーー」
「ヒイッ」
「衛っ」
母に背後から抱きつかれ身動きがとれない隙に、その女は驚くほど俊敏に逃げた。
父の四十九日が済んだ後、俺は母と町を出た。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「俺は誰も守らない」
勝手に期待され
勝手に幻滅され
罵られ、自責の念に駆られ自ら命を絶った父のように
俺はならない。
俺は、誰も守らない。
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