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マモル
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揚羽のクラスの劇が終わり舞台袖を覗くと、撤収作業で中は慌ただしかった。
仕方なく、揚羽のクラスの教室で戻ってくるのを待つことにした。
途中、先日俺らを追いかけてきた男を見かけて迂回した。
揚羽があんな風に笑うの、はじめて見た。
たまに笑っていたが、いつも前髪で目は隠されていたから。
舞台の上から揚羽の視線を感じた。
揚羽は王子ではなく、俺を見て笑った。
そう感じただけで、胸がギュッして、温かくなった。
「愛おしいなぁ……」
ポロリと溢れた言葉がしっくりきて、かぁっと顔が赤くなる。
そうか、俺は……
ガラッと教室の扉が開いて振り返る。
「アレ?あの、どうしたんですか?」
「あ、揚羽は……?」
劇に出ていた生徒がゾロゾロ戻ってきた中に揚羽が居なかった。
「体育館出たところで、小さなお姫さまに捕まってたよ。でも、すぐ戻るんじゃないかな」
「誰か付いてあげなかったのかよ」
「だって、誰かさんが破壊したゴミが重くて大変だったんだからね」
「あーごめん」
俺のことはすぐ忘れてワイワイ喋っている。
「揚羽、校庭裏を通って戻るはずだから、これ渡してもらえない?」
帽子を目深に被った女が俺に声を掛けてきて、ミニトートを俺に渡してきた。
「これ……?」
「メイク落としや化粧水やら乳液入ってるから。あと、タオルも入ってる。揚羽、早くメイク落としたいと思うからよろしくね」
そう言った女は俺にウィンクをした。
その顔は、少しだけ揚羽に似ていた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「はっ、はっ……なんで、いない……?」
校庭裏を抜けて劇をやった体育館裏まで行ったが、揚羽と会えなかった。
入れ違ったかと教室に戻って覗いたがそこにもまだ戻っていなかった。
そしてもう一度校庭裏に来たが、やはり揚羽と会うことができなかった。
人気のない校庭裏をぐるりと見渡すと、建物の陰から人が現れた。
慌てて駆け寄るが揚羽ではなかった。
「あーマモー。劇終わったよね。アタシも今ちょうど用事終わったんだぁ。だからデートしよ」
最早不快感しか感じない顔に眉を顰める。
「アンタの彼氏さん、来てんだろ。いいのかよ」
「大丈夫。あっちも違う子に鞍替えしたから」
「鞍替え?」
「そ、可愛い『お姫様』……痛っ」
咄嗟に女の腕を掴んだ。
痛がる女に構わず詰め寄る。
「その『お姫様』はどこに居るんだよ?お前が連れていったんだろ」
「え、何?痛っ……なんでそんなに怒ってるのよ」
「いいから教えろ」
ドスを効かせた声に女は怯えた様子で答えた。
そんな女を放って、お姫様の元に走った。
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