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マモル
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体育館裏にある倉庫に連れて行った。
体育館の脇を抜けて行った先にある倉庫は、今は使われてなく、誰も近づくことのない場所だった。
急いで向かったが、そこには既に揚羽はいなかった。
「くっ……」
揚羽を見つからない焦りから、血が出るほど強く唇を噛む。
ここから離れてしまっていたらと思ったら、もうどこを探して良いかわからず途方に暮れて立ちすくむ。
「どこだ……?」
揚羽、どこにいる?
何とか揚羽の痕跡を見つけるために、注意深く周りを見渡す。
その時。
「ひぎゃっーー」
こっちからは死角となる倉庫の陰から情けない醜い悲鳴の後、ドサっと倒れ込む音が聞こえた。
「そこかっ」
音のした方に行くと、そこには股間を押さえて蹲る男と、肩で息をしながら起きあがろうとしている揚羽がいた。
「あ……」
ポロポロと涙を流しながら俺を見上げる揚羽はボロボロだった。
殴られたのか頬は赤く、唇に塗られていたグロスは口の周りにまで広がりテラテラ光っていた。
ドレスには汚れはなかったが皺ができて、その裾からは太腿が覗いていた。
その全てが何が起きていたかを察するのに十分だった。
「大丈夫か、あーー」
「ゃっ……」
駆け寄り手を伸ばすと、震える肩がビクッと跳ねたため俺の動きが止まる。
「うっ……クソッ」
蹲っていた男が顔を上げる。
その顔はやはり、あの時の男だった。
女はこの男と別れるために、揚羽を差し出したのだ。
腹が立った。
まだ起き上がることの出来ない男の腹を蹴り上げると、「ぐあっ」と男は情けない声を上げ仰向けに転がった。
その唇がグロスでテラテラしていて、さらに腹が立った。
「だ、ダメです。衛先輩」
男をもう一度蹴るため、足を振り上げようとした俺を揚羽が止めた。
転がっていた男の動きも止まった。
「マ…モル、だと……?」
「そっ、俺がアンタが探していた『マモル』だよ」
ポケットからスマホを取り出し男を撮る。
「何?」
「何?じゃねぇよ。証拠撮ってんの。アンタ、コイツに何したか判ってる?レイプだよ」
「み、未遂だ」
「あ゛?未遂だろうが、しようとしたことはこの状況見ればわかんだろ⁉︎」
「……クッ……」
「おい。居るんだろ。カノジョさん」
「…あ、あの……マーー」
俺は振り返って女も撮る。
画面に顔を引き攣らせた女の顔が映る。
「アンタも同罪だ」
「あ、アタシは言われた通りにしただけでっ。こ、こんなことになるなんて……」
「知らなかった?、訳ないでしょ。これ、アンタの彼氏だろ。性格も、どう行動するかも十分判ってたはずだ」
「ぁ……ぁ……」
女はその場にへたり込んだ。
もう一度、男にカメラを戻す。
「今撮ってるのは動画だ。アンタらを警察に突き出してもいいけど、それはしない。でも、今後コイツに手出しするようならこの動画をネットにあげて拡散する。そうなったらどうなるか判ってるよな?」
「それだけは、辞めてくれ……」
「どうするかはアンタら次第だ」
録画を止めて、念のため動画をクラウドにも保存する。
「立てるか?」
手を差し伸べると、揚羽はまだ震える手を俺の手に乗せた。
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