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番外編:髪を切る (アゲハ)2
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日曜日。
学校の最寄駅で衛と待ち合わせをして、電車で移動した。
姉とは美容室で集合することになっている。
駅からは地図アプリのナビで向かった。
若者で溢れている駅前の通りを抜け、路地に入って5分ほど歩いたところにある建物の2階に美容室はあった。
「揚羽、待ってたよー。……アレ?揚羽、いつの間に大っきくなった?」
扉を開けた途端、姉・瑠璃の熱烈な抱擁を受けた。
衛が。
「瑠璃ちゃん。相手をちゃんと見てから抱きつかなきゃダメだろ」
「キョンちゃん、ごめんね」
奥から綺麗な男の人が出できて、瑠璃を嗜めた。
でも、
抱きつくのはダメだと思います。
「いらっしゃい。貴方が揚羽くん?……あらやだ、蝶子ちゃんにそっくりー」
あれ、口調が……。
そう思った次の瞬間、綺麗な男の人に僕は抱きしめられた。
僕も衛も、何が何だか判らず固まった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「蝶子ちゃんとは昔からの知り合いなの。あ、年齢は非公開よ。蝶子ちゃんが現役の時、私、舞台の上に立つ蝶子ちゃんに一目惚れしたの。でも、蝶子ちゃんったら演技は素敵なのにメイクが残念でね、見てらんなかったわ。だから、勝手に押しかけてゴリ押しで蝶子ちゃんのヘアメイク担当になったのよ。揚羽ちゃん、髪綺麗ねー」
「は、はあ……」
僕はこの勢いに圧倒されていた。
キョンちゃんこと恭介さんに、着いて早々、力強くハグをされ、そのまま連れて行かれシャンプーチェアに座った僕は、あっという間にカットクロスを巻かれ念入りにシャンプーをされた。
シャンプーが終わると、手を引かれて鏡台の前の椅子に座らされた。
取り残された衛は、丸椅子を用意してもらい後ろでその様子を見学していた。
「キョンちゃん、それ散々聞いたー」
僕の隣りで先にシャンプーを終えた瑠璃が、別のスタッフに髪を切ってもらいながら恭介さんに話しかけてきた。
「あら、揚羽ちゃんは初めてでしょ。あ、後ろの子は彼氏くん?イケメンねぇ。ウチの旦那さんには勝てないけど。ふふっ」
「えっと、あの……」
「キョンちゃん、惚気過ぎー」
瑠璃と恭介さんはウマが合うようで、楽しそうに喋っている。
「あのさ、本人の目の前でそう言う話止めてくれない。だから、いつも瑠璃ちゃんがくる時間帯は他の客断ってんだよ。2人ともわかってる?」
「「はーい、ごめんなさーい」」
反省の色が見えない2人にうんざりした顔を浮かべながら瑠璃の髪をカットしていたのは、恭介さんのパートナーさんだった。
確かにイケメンだ。
瑠璃の話では、この美容室は恭介さんとパートナーさんのお店で、スタッフは2人を合わせても5人しかいないそうだ。
スタイリングチェアが4脚、シャンプーチェアが2脚しかないこのお店は、広さ的にもこの人数で十分らしい。
恭介さんたち含め、スタッフは全員腕が良いだけでなく見た目も良いため、人通りの少ない路地にあるお店にも関わらず予約が取りづらい美容室で有名らしい。
瑠璃は母・蝶子の縁で月2回、固定で予約を入れてくれている。
しかも、瑠璃が来る日は、午後の時間を貸切にしてお店を閉めてしまうそうだ。
理由はたぶん、こうやって瑠璃と恭介さんと喋って長話になるからだろう。
「じゃあ、切るね。髪型の希望ある?」
「特にないです。前がよく見えるようになれば……。あっ、でも、短すぎるのはちょっと……」
「はいはーい。じゃあ、私がいい感じにするね。ああ、セットしやすいものにするから大丈夫だよ。あと、私のことはキョンちゃんね」
恭介さん……キョンちゃんは、テキパキとヘアクリップで髪をブロックで分けてチョキチョキと切り始めた。
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