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彼氏?じゃあ俺は?あの時付き合ってくれるって言ったよね?そもそも風俗はこいつの代わりだったの?
様々な疑問が頭の中に過ぎってはどれも答えなど出ずに流れていった。
ただ恥ずかしそうに赤面する龍太という男の様子からしてそれが本当のことなのだろうと思った。
「いつ、から……」
「出会ったのは3ヶ月ちょい前でそれから口説き落としたんだ。こいつが親の借金のせいで風俗で働かないといけないっていってたからさ。」
「え、琳それも説明せずに頼んでたの!?」
「ん?そうだよ?店側だって男と性行為が出来ることすら知らなかった奴より慣れてる奴の方が良いだろうしね。話をした日の夜に直ぐにこいつも行ってくれたし」
……俺が3ヶ月間、琳くんの為だと知らないおっさんに身体差し出して稼いだ金はこいつの親の借金のために消えたのか。
龍太が俺を奇妙な、それこそ誰にでも臀を差し出すような淫乱を見るかのような瞳で見ていた。
「なんで……琳くん……俺は……琳くんのために……」
「ゆず。」
ぼやける視界で彼だけは何故かはっきりと輪郭持っていた。
愛しい彼は綺麗に笑う。
「俺達のこと祝福してくれるよね?」
「───っ!!」
嗚呼、この人はなんて残酷なのだろう。
この人は俺を、俺との過去を全て無かったことにするつもりなのだ。
俺は琳くんの知り合いにいた誰とでも寝る奴で喜んで風俗に稼ぎに行ったと思わせるつもりなのだろう。
わざわざ金持ってる俺が働きに行かされたのも龍太が働きに行くはずだった店側の利益を考えただけ。それこそあの時言っていたスタッフが足りないから。
俺はこの人と付き合っていたという俺にとって何事にも変えられない尊い過去を無いことにしなければならない。
愛しい彼が他の誰かとなんの障害もなく付き合うために。
俺が障害とならないために。
「~~~琳くん……っお幸せに!!」
俺は琳くんとこの男の未来を祝うのではない。ただ琳くんの幸せだけを願うのだ。
そんな小さな意地を張って部屋を飛び出た。
今まで自分の使ってた部屋に飛び込むと見覚えのない部屋に変わっていた。
「…………今は龍太がその部屋使ってんだよ」
「………………はは、本当に全て奪われたんだな……」
自分が惨めで無様でとてつもなく憐れだった。
矢巾は何も言わず俺がよく飲んでいたカフェオレを差し出してきた。
……初めて琳くんが買ってくれたから好きだった飲み物。
砂糖とミルクが多くて甘ったるい筈なのに何故だかとても苦く感じた。
「……龍太ってどんなやつなの…琳くん……本気で惚れてるの……?」
「……龍太は喧嘩なんて駄目、未成年の煙草も酒も駄目、チームなんて作らず遊んだり働いたり勉強したりしないとってよく言ってるイイコちゃん。……琳にも真っ向から意見ぶつけてるから物珍しくて惚れたんだろうな」
イイコちゃん。
僕だって優等生のイイコちゃんだった。もし僕があの頃イイコちゃんのままでこんな生活の何もかも琳くんに合わせてたりしなかったらあの場所は正式に俺の場所になっていたのだろうか。
悔しい。
ぽっと出のあんな奴に。
「あ!いた!すいません!」
耳障りな声に振り返るとやはり龍太だった。
「勝手にいない間に部屋俺のになってしまってそれもほんとにごめんなさい!琳は許可は取ったって言ってたけどやっぱ改めて色々お礼と謝罪したくて。」
そんな許可知らない。こいつが俺の居場所取る許可なんて知ってたら絶対出さない。
「それでこれ……部屋にあったの貴方のだよね?」
そう言って渡されたのは2枚の写真だった。
助けて貰った日にアジトにこんな優等生来ることなんかない、と勝手に取られた多くのメンバーと緊張している僕が写った写真と1度だけ気まぐれに琳くんがデートをしてくれた日に人生で初めて行った水族館で撮ったツーショット。
大事で毎日眺めていた写真が今はとても虚しかった。
「……君は…琳くんとデートしたことある……?」
「えぇ!?あ、ある、けど…」
「何処に行ったの……」
「え、えと遊園地とかそこら辺の大通りとかあいつの家とか……そんな変わった所は行ってないけど」
聞くんじゃなかったと消えたくなった。
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