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#8
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「失礼します」
「どうぞ」
ドアノブを捻り開くとふわっと甘い匂いがする。
目の前には僕と同じ年くらいの、長身の男性が椅子が用意されてるにもかかわらず立っていた。
バチッと目が合うとなぜだかお腹の奥がきゅんとして目を離すことが出来ない。
「お掛けください」
「は、はい」
彼の落ち着いた声で我に返る。
「早速ですが名前と志望動機をお願いします」
始まった。散々練習して暗記してきたセリフを言うだけ。部屋の甘い匂いに気を取られそうになりながら口を開く。
「な、七瀬累です。御社を志望した理由は私は以前から本を読むことが好きで私も本をつ…」
「そのテンプレートみたいなのは止めようか、純粋な気持ちを聞きたい。」
出版社に本気で興味があった訳では無いが、かと言って適当に希望した訳でもない。
せっかく考えてきたセリフを止められてしまって頭が真っ白になる。
何か言わないと、口を動かそうとしているのに声が出ない、餌を求める鯉のようになってしまう。
「オメガなんだろ」
目の前の男の一言で余計体が凍りつく。また、オメガだとバカにするのか。
「俯くな。俺は性別とかどうでもいい、七瀬さんの本当の志望動機を聞きたいだけだ」
オメガと言ったり、俯くなと言ったりよく分からない。
でも、この人に嘘を伝えたら見透かされる、なぜかそんな気がした。
「生きたいから」
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