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#17
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「では明日の午後にお伺いします」
「よろしくお願いします」
結局全て彼の思うままに事が進んでいき、カカシのように見ているだけになっていた。
家の中を空っぽにし、残ったのは僕と彼の体と普段使いのバックのみ。
さっきの引越し騒ぎから一気に静かになって沈黙に耐えられず
「あの、取締役ですよね?」
と本人に向かってストレートすぎる質問を投げかけていた。
「逆に俺が誰に見える?」
質問で返されてしまい困っていると
「最初から七瀬さんがオメガなのは知っていた。実際男でオメガなんて珍しいし、オメガの就職率の低さも理解しているつもりだ。よく女性であっても履歴書にベータと偽証されることも少なくない」
何も無い部屋に彼の声が響き渡る。
「そんな中オメガと言って面接に来てくれた七瀬さんを俺は評価したかった。二次面接の時、俺と面接したのは七瀬さんだけ。最終面接をやっても良かったけど取締役の俺がこの会社に欲しいと思ったから採用させてもらった」
「はい」
初めて聞く話ばかりで下手くそな相槌しか返せない。
「勿論、取締役という立場だから公平な目で見ている。オメガだから採用したとかそんな理由じゃない。しっかり自分の意見を言える七瀬さんだから欲しいと思った」
「そうだったんですね」
初めて欲しいと言われた。
今まで僕はオメガという理由で蔑ろにされてきて、僕自身を見てくれる人なんて一人もいなかった。
それをあの数分話しただけの僕を必要としてくれる彼の元で働きたい。改めてそう思わせてくれた。
「ほら、ボケっとしてないで大家さんのとこ鍵返しに行くんだろ」
「は、はい」
背中を軽く叩かれ鍵を握りしてめいたことを思い出す。
「ボロ家との別れは済んだだろ、いくぞ」
彼に腕を引っ張られ心の中で「行ってきます」と告げると外へ1歩踏み出した。
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