アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
②
-
「ぶはっ、金髪坊主の微笑ってきしょいわぁ」
「あ?お前もピアスで顔引きつってんで?代わりにクギでどっか張り付けたろかゴルァ」
ごしごし制服で目ぇこすってから、またぎゃんぎゃん胸倉掴み合う二人を眺めた。
よかった。
俺らはそんな浅い繋がりちゃうんやな。
ちゃんとしっかり、トモダチできてるんやな。
なぁ千里。
はよ戻ってきてや。
まだお前の場所はちゃんとあるで?
あんなんで俺らが離れてく思てたら大間違いや。
「もうお前らうっさい!廊下でやれや!!」
その後しっかり二人には口止めした。
うっかり千里にゆわれてしもたらかなんからな。
ゆう時はちゃんと自分の口でゆう。
嫌われても、そん時がきたらちゃんと腹くくるよって。
教室の外から聞こえ始めたバカ笑いに、外にあった視線をそっちへ向ける。
一人にすんなって二人んとこ行って、笑ってたけど俺の心は千里一色やった。
四時間目。
いつもやったらこの辺で千里が来る。
けど当然その日はこやんくて、次の日も、その次の日も、千里が教室に姿を表す事はなかった。
あの踊り場にもあれから一回も行けてへん。
怖いからちごて、また千里にあんな態度取らせるんがイヤやったから。
ほんまは辛いはずなん。
やで自分から近付くんはやめよう思た。
「千里おらなつまらんな」
「な。アイツのサスケのいじり方見るん楽しかったんに」
「なんやそれ。俺はえぇ迷惑じゃ」
「うそこけ。幸せいっぱいやったやろ」
「…うっさい」
否定できんのが悔しい。
やっぱりバレたなかったかも。
千里を見んくなってもう二週間。
どっかで見掛けたり擦れ違ったりもなかった。
ガッコ来てるんかもあやしい始末。
ほとぼり冷めたら向こうからなんや接触あるやろって、テツもケイも放置プレイや。
ほんまにそれで大丈夫なんか、不安になりつつあった。
「げぇ、もうチャイム鳴りよった」
「次なんやった」
「俺に聞くな」
ガタガタと椅子の鳴る音。
それぞれが歩き戻って、俺も流れに混じって席に着いた。
千里の席は、俺の列の隣り、右斜め下。
ちょっと横向くと空席が視界に入り込んで来る。
今日もこんのやなって前向いた瞬間、戸口を横切った影に一瞬目が張り付いた。
「…あ」
うそや。
あれ、さっきの千里ちゃうの。
咄嗟にテツの方、後ろの戸口を振り返る。
したら。
したらやっぱり…。
テツの席を横切って入って来る千里に、思わず目が泳いだ。
テツも気付いたんか、びっくりしたような顔がちょっとだけ見えた。
後は俺、しっかり黒板の方へ向き直ってもうて。
ガタン、て聞こえた右後ろの机に、それを合図にして心臓が踊り出した。
来た。
千里や。
千里がおる。
ちゃんと見たいのにそんなんできるわけない。
どうしよう。
どうしたらえぇ?
これが最後のチャンスかも知れん。
授業が始まっても当然上の空。
全神経は右後方。
それでも気ぃ紛らわす為に必死でペンをノートに走らせた。
真剣に先生の話し聞いてるふりした。
震える手がわかる。
字ぃなんかぐちゃぐちゃや。
やで書き直そう思て消しゴム取ったん。
したら。
「あ…」
落としてもうてん。
しかも千里の方。
あほや。
もうサイアク。
ちゃうん、取ったらえぇねん。
普通にしたらえぇん。
この後話しするんに、堂々と強い態度でおらなあかん。
迷いに迷った挙句、きゅっと唇噛んでから振り返った。
視線は床しか拾わんと、落ちたはずの消しゴムを探す。
あれ。
ないやん。
どこ行ってんやろ。
一回振り向いたらあとは目的のもん探すだけ。
けど床にはなかった。
きょろきょろ目ぇ動かしてみたけど、どこにもなかった。
まぁええかって座り直した。
したら。
横から手が伸びて、なかったはずの消しゴムが突然ノートの上へ。
そん時見えた手。
一瞬やけど見間違うはずがないおっきい手。
千里やった。
千里が拾てくれた。
別になんて事ない。
落ちたもん拾ただけ。
けどあかんの。
今の俺にはあかんねん。
苦しい。
めちゃくちゃ苦しい。
今お前はどんな顔してんの?
どんな顔してコレ拾てくれたん?
なぁ千里。
ちゃんと、ちゃんとゆうてや。
.
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 43