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気ぃついたら、無意識にしっかりとその腕を掴み取ってた。
なんかゆうてや。
あかんでも何でもえぇ、反応してや。
足が震える。
更に手に力を込めた。
「ごめんやけど、受けれん」
不意に漏れた拒絶の言葉。
けど俺は平気やった。
ごめんて聞こえたと同時に強くなった腕の力から、言葉とは正反対な気持ちを感じてしもたから。
「えぇよ、謝らんで。ただな、知って欲しかっただけやから」
「あかんねん、俺」
「ん…、やでかまへんゆうてるやん」
「ちゃうねん、お前何も分かってへん」
「千里?」
首筋に埋まった顔から、苦しそうな千里の声が聞こえる。
なんとかしてくれゆうみたいに、顔を髪に押しつけて。
肩にかかるその茶色い髪に、思わず指先で触れてもうた。
「やめたほうがえぇ」
「何?」
「俺みたいなんやめとき。あかんよ」
「あかんて何で?何でそんな言い方するん」
抱き締められた形から、身を捩って抜け出す。
向き合って、それから俺は千里に抱き付いた。
ずっとこうしたかった。
ぎゅうって、したかってんな。
ずっと、ずっと、拒否るしかできんかった俺を許してや。
「サスケに拒絶されただけで、狂てまうん」
胸の内を語り始めた言葉に、黙って耳を傾ける。
知りたい。
全部知りたい。
何を考えて思てしてんのか。
全部俺に教えてや。
「俺な、刺してもうてん」
「何?」
「土曜日、人殺しかけた」
「…千里?」
「おかしなってん、全部。サスケに拒絶されて、ヤケとか可愛いもんやなくて」
何回も出て来る拒絶ゆう言葉に、やっぱりあの日聞かれてたんやって確信した。
そっから探れる千里の気持ちも、俺はもうわかってしもた。
「退学なる思たけど、先輩が揉み消してくれた。けどあかんて、お前のそばから離れる事決めてん」
「…ごめん。あん時はあぁゆうしかなかってん。俺かて、いっぱいいっぱいやった」
嫌われたない一心でゆうた言葉。
まさか千里も俺が好きやとか思わんかってんもん。
「なぁ、ゆうて?ほんまの気持ち、聞かしてや」
顔を上げて千里を見る。
その苦痛に歪んだ表情に、また泣きそうんなってもうた。
そんな顔せんで。
見たない。
ゆうてくれたらえぇん。
したら俺、ずっと千里の近くにおるから。
離れんから。
「あかん、お前とはおれん」
「何で?何があかん?」
「分かってへんからや。俺の気持ちを受けるゆう意味を、何も理解してへんやろ」
苦笑に変わったそれに、ちょっとだけ安堵する。
言われた意味は分からんかったけど、そんなんもうどうでもよかった。
ただ聞きたい。
千里の口から。
はっきり聞きたいねん。
「意味とかいらん。そんなんえぇねん」
「受けたら最後やねんで。お前もう、俺以外に見る事許されんよ」
「ん、かまへん。見んよ、誰も。千里がえぇん、千里が好きなん」
「壊れてまうから俺。サスケに拒絶されたら狂てまう」
まだ素直にゆうてくれん相手に段々じれったさが募る。
ごちゃごちゃうるさい。
俺は千里しかいらんねん。
どんな想いで今まで過ごして来たか、お前は何も知らんやろ。
「普通の恋愛やないん、責任取らなあかんねんで?わかるか、意味」
「もうえぇよ、わかったから。黙ってや」
思いっきりネクタイを引っ張る。
不意をつかれた千里の頭はすぐに下へさがった。
びっくりしたような顔を目の前に、ゆっくり目を閉じる。
弱ってる。
千里が小さく見える。
こんなデカいんに、めちゃくちゃ小さく見えんねん。
俺でえぇなら何でもする。
千里の為やったらどんな事でもするよ。
触れた唇と唇。
重なっただけのそれが、突然として深くなる。
タイを掴んでた手はいつの間にか緩んで、つかまるように千里のシャツを握ってた。
「あほやな、知らんで俺…、もう引いたらんよ、ムリや」
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