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③
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「あれ、テツちゃうん…?」
観覧車から降りて、とにかく休憩したかった俺はどっかのベンチに腰かけたまんましばらく動かんかった。
ぼうっと空を眺めて、飲みもんを片手に戻って来た千里へ視線を向けたら、その向こうに見慣れた金色頭を発見する。
隣にはケイ。
またなんや二人で揉めてんのかって呆れてたら、休憩所で見たあの制服がチラっと見えた。
アイツらはもう…。
「喧嘩しよる。止めにいこ」
「あ、ほんま」
胸倉の掴み合い。
テツが手ぇ出してまうまでにそこまで行けるかって全力で走った。
けどそれより早く千里が辿り着いて。
何とか離れさすんに成功した。
「お前らなんしてんの?」
「このボケが先に喧嘩売ってきよったんじゃ」
まだ興奮したまんまのテツが千里に抑えられたままそう唾を吐く。
ケイはわりと冷静で、したら何で止めんかったんやって俺は目で訴えた。
「コイツが悪いねん。止める理由ないやろ」
あかんわコイツら。
ほんま単細胞万歳や。
呆れる俺に千里も苦笑。
相手も相手であほみたいにガラが悪い。
プーやんとえらい違い。
場をおさめるんは難しそうやった。
相手のつれ二人も黙って傍観。
止めろよほんまに。
「仲間が増えてよかったのう。まぁ四対三でもこっちに分があるけどな」
「なんじゃとゴルァ?」
「テツ!もうあほな挑発にのんなて!!」
ちょっとは千里を見習え。
こんなんじゃ怒ったりせんよ?
多分やけど。
「なんじゃチビ。えぇこちゃんぶってあほちゃうん。シネば?」
なっ…!
なんやとぉ!?
シネとかなんで?
お前がシネっ!!
あかん。
むかつく。
俺も単細胞なんやろか…。
むかつき過ぎてかつい涙目んなってもうた。
シネとか簡単にゆわれて、正直ショックやった。
「泣いてんの?ガキが首突っ込んでくるからじゃ」
うるさいっ!!
ガキてどうせお前もタメやろが!
言葉にしたかったけどできんかった。
喧嘩とかしたことないから、変な恐怖心が喉に引っ掛かって声が出てこんかった。
悔しい。
ほんまムカつく…。
けどここは退かなあかんの。
テツの気持ち痛い程分かるけど、俺かて悔しいんは一緒やねん。
「あーもうムリ。殴るわ」
突然聞こえた声とその後に広がった光景。
倒れる相手を見下ろす千里に目が点になった。
「千里…?」
反応がない相手にまだ蹴りを入れようとするその腕をとっさに掴む。
「何してんの!?何で…っ!?」
「何で?そんなんサスケ泣かしたでに決まっとるやん」
冷え切ったその眼を見て背筋が震えた。
こんなん千里やない。
千里とちゃう。
そこには俺の知らん千里がおった。
倒れた相手はまだ起きようとせん。
つれのもんも焦り始めたんか表情が曇り出した。
そのうち騒ぎをききつけた両校の先生らがやってきて。
楽しい筈の遠足が、一気に陰を含んで暗なっていった。
(12)おわり
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