アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
別れるとか、いゃや…っ
-
怖かった。
ほんまに足が震えるくらい怖かった。
初めて目にした千里の暴力的行為。
先生来ても、俺が止めても、千里はまだ倒れとる相手を蹴ろうとしてん。
殺さな気ぃ済まんゆうみたいに、殺気立って。
そん時納得してしもた。
人殺しかけたゆうたあの言葉に。
納得した。
「サスケはテツらとおってもえぇんよ」
「いやや…。楽しめる気分でもないし」
「ごめんな、ぶち壊してもうて」
バスん中二人っきり。
暴力奮った千里に、先生はとりあえず外には出たらあかんゆうて、ここへ閉じ込めた。
相手の学校との話し合いとか処分は、帰ってからじっくり決めるらしい。
退学にはならんからって、頼りなさそうな大人のゆう事なんか信用できんかったけど、それでも曖昧なその言葉にすがる気持ちがあった。
一番後ろの席に並んで座って、触れたその手を無意識に握る。
「千里…」
「ん」
「もうしたらあかん、せんて、…約束してや」
乞うように目を見つめて、けど千里から返事はなくて。
顔を背けられて、更にきつく手を握りしめた。
「千里…?」
「約束はできん」
「何で?」
「サスケの事んなると、自分見失うから。あかんねん、俺。ゆうたやろ」
「したらどうすればえぇのん、俺…、何もできんの…?」
静まり帰るバスん中、時間だけがゆっくり過ぎてく。
取り残されたような錯覚を持ったまんま、俺はもっかい千里の手を強く握った。
あったかい手。
おっきい手。
俺に触れる為だけにつこてくれたらえぇんに…。
そこに視線を落としたら、目に映った小さい傷痕。
相手の歯があたったんか、少しだけ血が滲んでた。
「もっかい、選択させたるわ」
ふっと向けられた顔。
意味分からん台詞に思わず凝視してもうて、ほんで、次聞こえた言葉に視界がぼやけた。
「別れる?」
時間が止まった。
はっきり感じた。
やっと近くにって、浮かれてた自分があほみたいやった。
まだまだ遠い。
まだ全然、俺は千里の中へ入れてへん。
「な、に…、ゆうてんの…?」
「いつかほんまに、俺は取り返しのつかん事やらかしてまうかも知れんねん。そん時、むちゃキツなるんはお前や」
取り返しのつかん事。
それってなん?
何を指してんの?
殺す事?
罪を犯す事なん?
一気に頭がパニくった。
だから別れた方がえぇでって、お前はゆうてんの?
こんなに好きんさせといて、そんな薄情な事言いよるんか。
選択って、もう俺にはそんなもんあらへんのに。
「ゆっくり考え。なんぼでも待ったるから」
「俺はっ、」
「考えろゆうてんねん」
即答は許さん。
そんな風に言葉を遮られて、俺は息を飲み込んだ。
真剣な目。
固い表情。
少しも笑てくれん口許。
手の中からそれがするって抜け出てって、追いかけようした時、バスの扉が開いた。
「ほんまクソったれのボケが」
「やっぱ来るんちゃあったな」
「制服着てへんかったらぼこぼこにしたったわ」
「それはやめとけ」
止まってた空気が混ざり出す。
だるそうにぶつぶつ文句垂れながら、テツとケイが近付いて来た。
「なん、お前ら。遊んでたんちゃうの」
「あほか、そんな気分ちゃうし。ほれ、腹減った思て差し入れじゃ」
ずいっと伸びた手からえぇ匂いが漂う。
そういやもう昼やったなて、思てからそれを受け取った。
チラッと千里見たら、何もなかったみたいに笑てる。
腹減ったて、やきそばを食い出した。
「弁当持参やったんしらんかったわ」
「ほんまやて。皆飯食い出すからビビった」
「考えたら手ぶらで来たん俺らだけちゃうん」
「ぶはっ、手ぶらやで?誰も突っ込まんとこがまた悲しいよな」
「金だけ持って来てよかったしほんま」
ちゃうて。
弁当は知ってたよ。
けどそんなんよう作らんから、何か買うて食べよう思ててん。
多分千里も。
お前らちゃんとプリント読め。
「サスケいらんの?」
「あ、食べる…。あんがと…」
二人はもう外で食べてきたらしく、煙草吸いたいやら眠いやらを連発しだした。
.
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
35 / 43