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ごちゃごちゃ言いながら二人が姿を消す。
遠足のあん時みたいに、また気ぃ使われたって情けななった。
「どしたん、おかしいで今日」
「…別に普通やし」
元の場所に腰を下ろして、けどやっぱり二人きりやゆうんに千里は俺と距離を持つ。
いつもやったらちゅうくらいされててもおかしないん。
何で?
何で何もしてくれん?
遠足ではあんなに場所わきまえんかったお前が、今何でそんな呑気に酒あおってるん。
こんな事考えてる自分が恥ずかしいとかそんなん思う余裕もなくて。
こんな風にした千里をただ恨んだ。
そら千里かてこんな時くらいある。
ただおるだけでえぇとか、そんな気持ちの時もあるん。
わかってる。
けど俺はもう染まってしもてんねん。
お前に全部塗り替えられてしもてんの。
一日一回はぎゅうしてくれな落ち着かん。
こんなんしたん誰や。
千里やんか。
「サスケ?」
「何もないから…」
「あるんやろ、なんかスネてるし」
「す、スネてへんっ!」
「可愛えぇな。何でそんなんなん?」
「もーうるさい…」
言葉にせな伝わらん事なんやったら俺は一生我慢する。
ぎゅうしてとか触ってとか、流石にようゆわん。
あほちん。
悟れや。
「サスケ」
「ん」
「俺な、ガッコ辞めよう思てんねん」
「は?」
「働くん」
真っ直ぐ向けられた視線。
何ゆうてんのかさっぱり理解できん言葉に、俺も真っ直ぐ視線を返す。
思考は止まった。
けど時間は流れてる。
カチカチと、時計の秒針音だけがしばらく室内を漂った。
「何、ゆうてんの…?」
「会えへんわけちゃうから。いつでも会いに行くし」
「そんなんどうでもえぇやん、辞めるとか何で?」
「どのみち留年やん、多分。やで辞める」
「あほちゃうの…」
「かもしれん。けど決めたから」
きっと多分、俺が何をゆうてもあかんの。
やで思うん。
思い知らされる。
俺は千里に対して何の力も持ってへんて。
目と鼻の奥がつんて痛なった。
「まだ入学して2年も経ってへんやん…」
「もともと俺は高校行くつもりなかった」
「何で辞めるん…」
「俺はな、サスケがおったらそんでえぇんよ」
「答えんなっとらん!何で辞めるんて!!」
荒びた声。
出してから自分で驚いた。
苦しそうに俺を見る千里から視線を外して、缶の底に残った温いアルコールを一気に飲み干す。
涙は堪えた。
「せやって、千里はいっつもせや…、何もゆうてくれん、俺は、俺は何の為にいてるん…」
「知りたいん?」
「当たり前やん…」
「別に全部を伝えやなあかん事はないんちゃうの。事実は大抵傷作るもんや。俺はサスケに、自分のマイナスは見せたない」
「そんなん、そんなんおかしいわっ…。知りたいねん全部。プラスもマイナスも、全部知りたい!」
俺の知らんとこで辛い顔せんで。
俺のいてへんとこで心傷めんで。
全部隠して俺に笑顔向けてくれたかて、俺は何も嬉しない。
それやったら逆の方がえぇ。
俺にだけ弱い姿見せたらえぇん。
他では笑てたらえぇ。
何の為に此処にいてると思てんの。
寄りかかって欲しいから、やでいてるんやろ。
そんな頼りないん?
もたれたらすぐ倒れてまうて、お前は信用してくれんの?
「俺の事、どこまで知ってる?」
「…どこって」
「親おらんのは知ってる?施設おったんも」
本人の承諾なしに過去を探った事に対して、俺はずっと後ろめたさ持ってた。
やでようゆわんかって、マサルの事も、マサルから話し聞いたって事も、何もゆえんかった。
けど知らんかったって、うまく演技もしきれんと。
「誰に聞いたん?」
問われて、押し黙った。
「怒らんからゆうてみ」
「知らん、何も聞いてへん…」
ゆうたらマサルに迷惑かかるかもしらん。
やで何回聞かれてもずっとシラを切り通した。
折れたんは千里。
最初から全部、話してくれた。
「中学くらいん時、親戚の人に引き取られてんな。悪さばっかしてた俺を、おばちゃんだけはいつもかばってくれて」
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