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好きなやつできたゆうてフラれた方が、何倍もマシや
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謹慎が解ける前に、千里は退学届けを学校に提出した。
住み込みで働けるとこ見付かるまでは、今まで住んでたとこにおらせて貰えるようんなったらしい。
おばさんがおじさんに泣き付いて、それくらいはって頼んでくれたみたいやった。
ちょっと前まで高二やった千里が、今は必死で働き口と宿を探してる。
何でなんやろ。
何でこんなんなってんねやろ。
平等やゆう人権は、ほんの一握りさえも存在してへん。
そう感じた。
千里が何したん。
まだ、まだ十代やゆう法的にも世間的にも何の力も持ってへん子供が、何でいきなり世の中へ放り出されやなあかんねん。
理不尽や。
こんなん、おかしいわ。
「サスケ」
「んぁー」
「何じゃその返事」
「千里仕事見付かったん?」
「んー、まだ…」
「そうなん?ほんまに?」
「何で…?」
三人になってしもた昼休み。
もう、俺を抱き締めて離さん千里はここにはおらん。
人目とか全然気にせんと、ちゅうしようとして俺に怒られる千里はもうおらんかった。
寂しい。
毎日帰りにアパート寄って会うてはおるけど、てかほとんど毎日泊まったりして一緒にはおるけど、寂しかった。
同じ制服着て、あほゆうて笑う千里がもっかい見たかった。
「千里、見掛けたゆうヤツおんねん」
「どこで」
「バーテンみたいなんしてたとか聞いたで」
「バーテン…?」
ケイの言葉に瞬時に眉が寄る。
バーテンてあれやろ、カウンターあるような大人の店で酒作る人やんな。
見掛けたって何処でやろ。
未成年やのにそんなとこ雇って貰えるわけない。
てか俺何も聞いてへんし、人違いやん。
とりあえずそう自己完結して、その話はそれで終わった。
「今日は泊まってくやろ?」
「んー」
学校が終わってそのまま千里のアパートへ。
職探しを朝から夕方まで頑張ってる千里に、俺は下手くそながらもちょっとずつ料理を覚えて、千里の為に夕食を作るんが日課んなってた。
狭いキッチンスペースで、玉葱相手に包丁と格闘してたら背中からぎゅうって抱き締められる。
そろそろ許してくれんって耳の後ろに口を寄せる千里に、俺は危うく指を切断するとこやった。
「あっ、危なっ、ちょ、千里、あほちゃうの!?包丁いろてる時は近よんなていつもゆうとるやん!!」
「…なぁ、限界」
「あ、後や!!その話はあとでっ」
許してくれんってゆうのは、まぁ、ん、アレん事。
そら一緒に寝てんのやから、何回も途中まではされまくっとる。
けどまだ最後までは許してへんの。
あ、…穴、とかはとっくに指で犯されてんのやけど、いざ千里のをってなると、怖てあかんねん。
二週間くらいずっとこんなん。
やで我慢さすのもなって思て、昨日は泊まらんと帰った。
千里は不服みたいやったけど。
「もー俺メシよりサスケ食いたい。したらメシとかいらん」
「とりあえず待っとけ」
「…はい」
包丁片手に肩越しに千里を睨む。
苦手なもんに取り組む時って俺は人一倍神経使うし集中したなるん。
それを邪魔されたら人が変わる。
イライラでガオーなんねや。
分かる人には分かる。
今日は特に苦手な玉葱のみじん切りをやってる最中やったから余計や。
苦手な物事に対しても完璧さを追求してまう厄介な性格やもんで、本当にみじん切りになるまでひたすら包丁を動かし続けた。
それから一時間後に出来たんがハンバーグ。
我ながら上出来やん。
「マヨ欲しい」
「ん」
「ケチャップも」
「ん」
一生懸命作ったもんが、好きな人の口ん中へ入ってく瞬間てほんまドキドキすんねん。
不味くないかなとか、ちゃんと出来てるかなとか、その口からウマイって言葉が出てくるまで、俺は毎回肩の力が抜けんかった。
「あーウマイ、やばい、惚れ直すわ」
「ほんま…?」
「ん、最高」
ガツガツ食べ始める姿を見て、ほうっと息を吐く。
それから俺も自分の分に箸を伸ばした。
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