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テディベア
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一晩部屋で考えたものの、結局いい案は浮かばなかった。不甲斐ない自分に情けなさを覚えつつ、今日もまた昨日と同じように出勤する。
朝ごはんを少年の元に運び、朝礼を行って、各自勤務に入る。ひなどり棟の子供に決まった過ごし方というものは無く、児童の精神状態とそれを観察する担当職員の裁量で一日が決まるため、一班のメンバーでも、職員室に残って作業する者とひなどり棟へ向かう者とに分かれていた。
俺はひなどり棟へ向かった。今日はやろうと思っていたことがあったのだ。
ひなどり棟に入って左手に曲がる。すると、すぐに二階へ続く階段が見える。角の丸くなった、段差の小さな階段を上ると、二階には作業療法室やプレイルーム、図書室や処置室などの部屋が並んでいる。俺はプレイルームに入った。
プレイルームの床はカラフルなジョイントマットが敷き詰められており、上履きを履いたまま上がることは出来ない。
弾力のあるマットに足をつけると、ふと、この間まで担当していた子供のことを思い出した。
先月までつばめ棟にいた子、勇気君。
プレイルームが好きな彼は、朝会うとすぐに俺の手を引いてプレイルームに行こうとせがんだ。一番好きだったのは動物のパズルで、同じもので何度も繰り返し遊んでいたっけ。たまに外で遊ばなくてはいけない日は、ぐずって泣いて大変だった。それでも、一度外に出てしまえば不機嫌だったことなんてすっかり忘れて大はしゃぎする。そして疲れて眠って、部屋までおぶって帰った。目が覚めるとまたプレイルームに行きたいと騒いで、俺が「少しだけ」と言って連れていくと、満面の笑みを浮かべて言うのだ。「ありがとう」と。
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